世界の路地、それぞれの日々
 ブラジル、どうしようもない日々
                 ヨネブラ・ジルオ記
 Take8
 ブラジル渡航のわけ

 ブラジルに行ったのはボサノバが好きだったから。
 ブラジルに行ったのはサッカーがやりたかったから。
 ブラジルに行ったのはアマゾンの原生林に憧れたから。
 ブラジルに行ったのはサッカーの中継で見たブラジル女性に一目惚れしたから。

 ブラジルに行ったのは・・・なんてのは、全部嘘。

 ブラジルの何かがもともと好きだった分けではない。本当言うと、ブラジルには陽気な国だろうぐらいのイメージしか持っていなかった。でも、僕がブラジルに行くことを決めたのは、そのイメージ、ただそれだけのためだった。その頃、僕はどうしようもなくブルーだったから。

「もう、これ以上一緒にいるのは無理よ。あんただってそう思ってたでしょ。」

 その子は僕から去った。その頃の僕にとっては、その子が全てだった。でも、確かにその子の言うとおりだった。僕は、その子のことで頭がいっぱいで何にも手が付けられなかった。

 それは、ブラジルに行く前の年(2003年)の5月だった。2002年度、音楽に打ち込むという理由で、僕は大学を休学していた。でも、僕はその子のことだけ考えて、僕とあの子の心が重なる瞬間だけを求めて、その1年間を過ごした。生活費を稼がないといけなかったけど、バイトもろくに手に付かず、借金もだいぶ作った。

 2003年4月、僕は復学した。このままでは駄目だと思っていた。でも、どうすればいいのか分からなかった。自分から別れることもできなかったし、一緒にいるために強くならなければと思っていたけど、そうなれそうもないことも分かっていた。

 そして、結局向こうから別れ話を切り出されて、そのまま別れることになった。人であれ、ものであれ、そこまで夢中になったことはなかったから、僕はからっぽになった。ブラジルに行くことを決めたのは、そんな情けない理由。どこか、陽気なとこに行きたかった。それに、そのからっぽを埋めたかった。

 【前回までの記事】
Take7 ハード・ネイティブ長距離バス旅行 サルバドール篇(2011.3.7)
Take6 ハード・ネイティブ長距離バス旅行 サルバドール篇(2011.2.28)
Take5 ハード・ネイティブ長距離バス旅行 フォルタレーザ篇(2011.2.21)
Take4 ハード・ネイティブ長距離バス旅行 べレンの舞姫篇2011.2.14)
Take3 ハード・ネイティブ長距離バス旅行 べレンの舞姫篇(2011.2.7)
Take2 ハード・ネイティブ長距離バス旅行 マラバ篇(2011.1.31)
Take1 ハード・ネイティブ長距離バス旅行(2011.1.24)


 【筆者紹介】 ヨネブラ・ジルオ

 年齢不詳。大学中退直後、ブラジル、サンパウロにある日刊邦字新聞社で2004年4月から記者を経験。会社の社員寮がスラム街的な場所にあったためか、どうしようもない1年を過ごした(らしい)。その後、紆余曲折を経て、現在はフランス、パリのアンダーグラウンド・シーンで音楽活動をしている。本連載『ブラジル、どうしようもない日々』は、パリで暮らすジルオがブラジル生活を回想して書いた実話。



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