世界の路地、それぞれの日々
 ブラジル、どうしようもない日々
                 ヨネブラ・ジルオ記
 Take23
 

 会社を辞めてアマゾンに行く。

 僕は、決意した。 

 僕は、ブラジルに何を求めて来たのか。前にも書いた通り、特に何かを求めてブラジルに来た訳ではない。でも、こんなものじゃない。僕が求めていたのは、こんな日常ではない。キャンパスに何か漠然とおもしろい絵を書こうとする。でも、出来上がってきた絵は期待から遠く、いいインスピレーションを与えてくれない神になのか、自分のセンスになのか、なんだか憤りを感じる。

 せっかく、ブラジルにいるのだから、ブラジル人と四六時中接しているべきだ。でも、ブラジル人と接する時間と言えば、ボアッチでのそれが9割。会社はほぼ日本人ばかり、週末に行くクラブは一度味をしめた日系若者主催のそれがほとんど。しかも、常連の僕に変な噂がたったのだろう。この頃には、僕によってくる日系ギャルは、ほぼ皆無になっていた。

 一体、ブラジルまで来て何をしているのだろうか。こんな感情が身体のすみずみまで浸透し、手足の自由を奪っていったのだろう。9月ごろだろうか、僕はひどくくたびれた生活を送っていた。昼前に出社し(これはそれまでと変わらないけど)、すぐその足で街に出かける。ビールを飲む、ボアッチに行く。仕事はしない。一月ほどそんな生活が続いた。

 ただ・・・

 小堺さん、よろしくお願いします。

「何が出るかな?何が出る?!何が出るかな?チャラララ」

「きっかけは、○○!略して、きっ○!」

 小堺さん、ありがとう。そう、きっかけは、女に振られた。

 あっ、ライオンちゃんもありがとう。

 その二月ほど前から、僕には気に入っている子がいた。昼間はボアッチに行き、夜はたまにその子と過ごす、しかも彼女ではないという、大変有難い女の子だった。

 でも、その子には彼氏ができて、僕はそのときになって初めて、(脚本通り)その子の事がたまらなく好きだと気づいた。それで、なんとか僕のもとに取り戻そうと、何とか説得して、その子と一晩一緒にいてもらったけど、朝になるとその子は僕の部屋を出て行った。僕はベッドから出る事もなく、彼女が部屋を出て行くのをただ見ていた。そして、一人になった部屋で、時間を閉じ込めようと深い眠りについた。それが、一月前。

 女にふられてブラジルに飛んだ。ブラジルで失恋したら、どこに行けばいいのか。アマゾンしかないだろう。師匠が言うには、めちゃくちゃもてるというし。

「編集長。話があります。辞めさせてください。アマゾンに行きます。」

 編集長は鼻で笑った。というか、きれてた。「お前、なめすぎだろう?!駄目に決まってるだろう」。

 こうなったら、強行突破でアマゾン・ジャンプしかないか。僕の葛藤、どうしようもない日々、そしてこの話はまだ続く。

 【前回までの記事】
Take22 初ステージ(2011.10.4)
Take21 ブラジ龍(2011.9.25)
Take20 アドバイス(2011.8.23)
Take19 月一回の習慣II(2011.7.18)
Take18 月一回の習慣I(2011.7.04)
Take17 日系ブラジル人の葛藤(2011.6.13)
Take16 フェスタ・ジュニーナ(2011.5.23)
Take15 初めての取材旅行働(2011.5.9)
Take14 初めての取材旅行闘(2011.4.25)
Take13 変化の序章闘 (2011.4.18)
Take12 初めての取材旅行(2011.4.11)
Take11 変化の序章(2011.4.4)
Take10 ご近所案内(2011.3.28)
Take9 耳を澄まさなくても聞こえる(2011.3.21)
Take8 ブラジル渡航のわけ(2011.3.14)
Take7 ハード・ネイティブ長距離バス旅行 サルバドール篇II(2011.3.7)
Take6 ハード・ネイティブ長距離バス旅行 サルバドール篇I(2011.2.28)
Take5 ハード・ネイティブ長距離バス旅行 フォルタレーザ篇(2011.2.21)
Take4 ハード・ネイティブ長距離バス旅行 べレンの舞姫篇II2011.2.14)
Take3 ハード・ネイティブ長距離バス旅行 べレンの舞姫篇I(2011.2.7)
Take2 ハード・ネイティブ長距離バス旅行 マラバ篇(2011.1.31)
Take1 ハード・ネイティブ長距離バス旅行(2011.1.24)


 【筆者紹介】 ヨネブラ・ジルオ

 年齢不詳。大学中退直後、ブラジル、サンパウロにある日刊邦字新聞社で2004年4月から記者を経験。会社の社員寮がスラム街的な場所にあったためか、どうしようもない1年を過ごした(らしい)。その後、紆余曲折を経て、現在はフランス、パリのアンダーグラウンド・シーンで音楽活動をしている。本連載『ブラジル、どうしようもない日々』は、パリで暮らすジルオがブラジル生活を回想して書いた実話。



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