世界の路地、それぞれの日々
 青春インド
                      入土 仁 記

 Take11 ビヨンド エクスプレッション

 「仁、よかったら私たちのベッドで一緒に寝ない?その方が温かわよ」

 やはりネパールに来たからには世界一のエベレストが見たい。あんなでかい山、ネパールのどこからでも見れると思っていた。でも、ドン キホーテは格安というイメージ同様、それは大きな誤解。エベレストをはっきり見ようと思ったら、飛行機でエベレストの登山ベースキャンプまで行く必要がある。

 ただし、ネパールの首都カトマンズからバスで4時間ぐらい東(距離的には100キロほど)へ行ったところにある小さな村から、晴れた日の朝、運がよければエベレストを目にすることができるという。 「エベレストが見たい」と、僕は駄々をこねた。そして、2人が帰る直前、3人でその村まで1泊2日の小旅行に出かけることになった。この小旅行が肉親殺人事件並みの入り組んだ感情を与えることになるとは、誰も知るよしもなかった。

 その村は確か、ナガラコートという名称だった気がする。夕方その村に到着して、バスを降りると冷えた強風が僕らを襲った。ナガラコートはエベレストが見れるというだけあって標高が高い。この11月下旬の時期でも、首都のカトマンズでは日中は半袖で平気だったため(夜はけっこう寒い)、ナガラコートの寒さは想像以上だった。

 とりあえず体を温めようと、喫茶店みたいなとことでチャイを飲んでいると、ギャル男専用の黒いサングラスをかけた身長160cmのキムタクみたいな男が現われた。「ホテルを経営しているんだけど、そこに泊まりませんか」。インドならそんな男のホテルに行くのは危険だけど、ここばネパールのしかも山奥。コリンが値段交渉した結果、格安でそこに泊まることになった。

 そのホテルは村から少し離れたさらに山奥というか崖の近くにあった。相当見晴らしがよかった分、常に強風にさらされていた。とにかく寒いからということで、僕らは三人同じ部屋に泊まることになった。寒さとは本当に恐ろしい。

 夕食を食べ、トゥンバという温かい酒を飲み、吸うものすって気分がよくなったところで僕らは演奏を始めた。イザベラもキムタクもギターと歌が相当上手く、キムタクの弟がネパール式ジャンベ(打楽器)で軽快なリズムを刻むと、僕らの演奏に合わせてダンス狂のコリンがコサックダンスを踊った。外では突風が吹き荒れるなか、僕らのいた食堂にはロウソクだけが灯され、家族パーティーに似た親密な時が流れた。

 翌朝は日の出前に起きて、エベレストを見なければならない。僕らは夜の10時過ぎには部屋に戻った。部屋にはダブルベッドとシングルベッドが一つずつあった。 そして、シングルベッドに潜り込んだ僕に2人が冒頭の言葉を囁いたのだった。

 一瞬ためらった。もしその場にいたのがコリンだけだったら僕はためらいなくダブルベッドに飛び込んでいただろう。でも、そこには巨大なおまけが。3P童貞の卒業式がこんな形になるのかと思うと、ホテル中の窓ガラスを金属バットで割ってまわりたい気にもなった。しかし、僕も男。ここは覚悟を決める時。何にでもがっつくという精神が僕には足りない。今こそそんな自分にさよならを告げる時だ。

 ダブルベッド上での配列は入り口のドアの方から順にコリン、仁、イザベラ。つまり僕は真ん中。書いていて本当に恥ずかしいが、僕は両腕枕をして両手を片方づつ、それぞれの女の手と握り合った。僕は自分から仕掛けるべきかどうか、いまだ葛藤していた。すると、2人ともちょこちょこ僕にちょっかいを出してくる。指で僕の手のひらをなぞったり、僕の顔にキスしてきたり。

 そんな状態がどれほど続いたであろうか、ついに唇と唇が重なった。イザベルと僕のそれが。後はただ自分の意識をどかにとばしてしまうだけだった。舌がからみあい、仁は55という人生の背番号をつけた熟女のパイオツにむしゃぶりついた。乳首を舌で転がすと、年輪を刻みただでさえ大きいそれが、さらに肥大化した。(気のせいか、それはやはり漬物の味がした。『稲中卓球部』で主人公の前野が、ありさのそれにしゃぶりついた時のように。)

 イザベラが熱い吐息を漏らし始めた時だった。予想外の展開が起きた。コリンがベッドから抜け出し、部屋から出て行ってしまった。イザベラの方に集中しすぎて、コリンの方が手薄になってしまったからだろうか?分からない。そして、さらに分からないのはその時の仁。コリンがいなくなったのなら、もう全てストップしてもいいはず。でも、でも、もう別に何が何であろうとどうでもよかった。

 何にでも果敢に挑戦する強靭な意志。克己、克己、勃起。仁はさらに意識を飛ばし、ポンコチンを奮い立たせた。コリンがいなくなり、自由になった右手を仁はイザベラの恥部へと伸ばした。ぬぬぬぬぬぬぬぬぬ、、、濡れていた。ダァーーー  掻き回せ!掻き回せ!頑張れ!負けるな!仁!  そして、その時が来た。let's go inside of イザベラ。  しかし、ここで、またしても予想外の展開。

 なんと、イザベラがLet’s goを拒みだしたのだ。 「やっちゃうと、もう今までのような関係じゃなくなるからやめましょう」  おい、ちょっと待て!何なんだお前は!俺がどんな思いで、どんな強い克己心をもってこの状況に臨んでいるのか分かってんのか?俺のチンを見てみろよ。半立ちにもなってないよな?!そういうことなんだよ!この雌豚!!!!!

 さすがに、仁はそれを口にはしなかったが、その代わり仁の闘志は燃え尽きてもいないのに灰となった。もう、仁はそれ以上、全く手をださなかった。でも、どういうつもりだ?その後もイザベラは執拗にキスをせがんできた。一晩中。  翌朝。日の出前に仁は起き、一人ベッドを抜け出した。布団、そして複雑な思いを抱え。自己嫌悪、イザベラ嫌悪、コリンのコサックダンス。最早何と言って表現していいのか分からない。ただ、もうその時の仁は、エベレストを見るという行為にすがりつくことしか出来なかった。

 仁はイザベラやコリンとかち合うのを避けるため、ホテルから少し離れたとことに日の出とエベレストを見に行った。なのに何故。イザベラは仁を発見するのだ。そして、仁が包まっていた布団に入ってくると囁くのだった。 「昨夜はとってもスウィートな夜だったわね」  そして、キスをせがんできた。  唇をレイプされながら仁は祈っていた。せめてエベレストが見れれば、僕の心はいくらか救われるでしょう。どうか神様、かの山の御姿をお与え下さい。

 エベレストは雲に隠れ、仁の前に姿を現さなかった。日の出さえも雲のためにぼんやりとしていた。救いの神を失った仁の心に現われたのは殺意だったという。「イザベラ マジ ブッコロス イザベラ マジ ブッコロス」  でも、朝食を食べ少し冷静になった仁は、イザベラを殺す代わりにエベレストを見に行くことに決めた。救いを求めて。だけど、ホテルの人も含めみんなに反対された。「この村から歩いてエベレストを見に行くなんて、自殺行為だ」と。でも、でも、だって、だって、、、、、、、、、、、

 仕方なく、仁は二人とともにカトマンズまで戻った。表現しようもないいらだちと悲しみ、そして惨めさにさいなまれる仁。対照的に、イザベラは意気揚々としていた。若い男に身体を求められたという自負心からだろう。カーッペッ  仁はそれから一週間ほどオナニーが出来なかった。「だって、襲いかかるように浮かんでくるんだ。あのデカイ年輪乳首が」と、仁は脅えながら語った。きっと、今日から3日間ぐらい、またできないだろう。

【バックナンバー】
Take8  ガンジス川のほとりにて3(2012.1.30)
Take7  ガンジス川のほとりにて2(2012.1.4)
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Take4 Smells like India 3 (2011.11.19)
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Take1 こんにちは、青春 (2011.9.28)

【寄稿者紹介】入土 仁(インド・ジン)。2008年春、大学院で社会哲学の修士号を取得後、一職人として建築現場で働いていたが、その年の秋に突如インドIN。現在、宇宙飛行士を目指す入土仁が、過酷な訓練の最中に回想した、青春インド放浪記。実話。



2012.5.4 世界の路地、それぞれの日々  文筆劇場・トップ