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  マニュアル人間の言い分

     先回、若者は、まずは「マニュアル人間」の水準に達するべきだと書きました。

 本気で一流たらんと思うなら、「常識にとらわれない発想」とか「未来をつくる創造性」といった手垢にまみれた能書きを拒否する必要があります。こういった標語に踊らされるようでは、ただの世間知らずが、天才を自称するのと同じです。

 あのね、「芸術家でありたい」と「芸術家と思われたい」は、似ているようで、全くの別物です。

 「芸術家と思われたい」のなら、髪をピンクに染めて、「俺って、常識にとらわれない人だからさぁ」などと、周囲に吹聴していればいいのです。

 あるいは、「これからは、オンリーワンの時代だ。俺も君も、オンリーワンだ。」などと絶叫していれば十分です。そういう人はいっぱいいます。

 さすが、脱マニュアル人間は、やることなすことが、規格外! などとおだててあげれば満足しますかね。

 しかしね、そんなものは所詮、弱者を懐柔するためのスローガンでしかないのです。

 僕は、マニュアル人間ですよ。だから、真面目に受験勉強をやりました。おかげで、世間体のいい学校に進学できました。

 やっぱりね、こういう足元を無視して、「これからは、脱マニュアル人間が成功する」などと言うのは、地に足が着いていないと思うのだよね。

 僕の思考はどうしても常識にとらわれるし、未来をつくる創造性とか、ご立派なものは持ち合わせていません。

 もし僕に、他人と少し違うところがあるとしたら、実際に汗を流したり、身銭を切ることができることくらいです。あるいは、自分で自分のためのマニュアルを作ってしまうことくらいです。

 睡眠時間も栄養バランスも、ある程度、カチッと決めています。そして、規則正しく、稽古や読書、仕事の経験を積み重ねています。

 近頃、過大評価されることがあるので、あえて言っておきます。

 僕は、所詮は、当たり前のことをやっているマニュアル人間に過ぎません。  ただし、近頃は、マニュアルも実践できない人が多いので、ちょっと目立つだけです。    

山田宏哉記

P.S. 本日、かねてから会いたかった作家さんとお会いできました。元をたどれば自主的な献本のおかげです。

2006.12.8
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