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  知識・経験のストックは、虚勢である

   知識や経験のストック(蓄積)がある人は、ただそれだけで優秀に見えます。

 これは、落とし穴です。  誰でも、月日を経れば、自然と知識や経験の量が増えます。  もしそうでなければ、相当なボンクラ生活を送っていることになります。

   ストックより遥かに大切なのは、知識習得や上達のスピードです。

 例えば、現在のストック(知識量・経験量)が1,000で、毎月50ずつ増えるA君と、現在のストックが400で、毎月100ずつ増えるB君がいたとします。

 この時、一流の人間は、B君(の学習能力)を評価しますが、三流の人間は、A君(のストック)を評価します。

 確かに、現時点では、A君の方がB君より、有能に見えます。  しかし、このペースで行けば、1年後には、2人の知識量は並びます。  そして、その後は、もはや一方的にB君がA君を引き離すことになります。

 大人は、ストックはありますが、えてして上達や成長のスピードが鈍いのです。  しかし、多少は、ストックが増えてるため、衰退局面にいるのに、危機感を感じません。  従って、「この調子でいけば、大丈夫だ」などと、とんでもない錯覚と勘違いをします。

 反面、子供は、ストックはありませんが、上達や成長のスピードが速いです。大人の世界でも、習熟速度の速さは、有能な人間の絶対条件です。

   ですので、僕たちが見習うべきは、明らかに大人より子供の方です。  現時点の知識や経験に騙されてはいけません。

 もちろん、知識や経験の大切さは、言うまでもありません。  しかしそれらは、凡人でも歳を食えば、蓄積されるものです。

 不甲斐なく生きた八十歳の老人でも、二十歳の若造よりは、世の中のことを知っているし、経験も豊富でしょう。敬意も払われてしかるべきでしょう。

 しかし、だからといって、その若者がこの老人を見習ったりする必要は全くありません。むしろ、しない方がいい場合が多いでしょう。

 僕たちが、本気で問うべきは、どうすれば子供の習熟速度を維持できるか、ということです。なぜなら、天才とは、子供の成長・上達スピードを維持したまま、大人になった人たちに他ならないからです。

 ちなみに、習熟速度を上げる重要な鍵のひとつは、「身体の柔軟性」が握っています。

 何しろ、人間は生まれた時は、驚くほど身体が柔らかいのに、年月と共に身体が硬化していくからです。これが、上達スピードをダウンさせ、凡人への道をまっしぐらにさせる元凶のひとつであることは間違いありません。    

山田宏哉記

追記。 「成長停止」の怖さに、もっと自覚的になりましょう。

2006.12.20

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