ジョン・スミスへの手紙
サイバー・ラボ・ノート (1110)

 先入観を削る

   美術大学出身のマスコミ関係者に話を聞く機会がありました。  その中で、デッサンの本質について言われたことが印象的でした。

 「初心者は、例えば、リンゴの絵を描くとき、実際に目の前にあるリンゴをしっかり見ないで、頭の中で考えた、いかにもリンゴという絵を描いてしまう。しかし、そのようなリンゴは、どこにも存在しない。」

 これは、決定的に重要なことです。

   例えば、僕たちは、安易に「星」を「☆」の形で表記します。  しかし、「☆」の形をした星など、実は存在しません。  星は、たいてい球状の形をしています。

 つまり、モノをしっかり見るというのは、ただそれだけで、とても厳しく大変なことなのです。

   画家は、このような先入観に常に自覚的でなければなりません。  大げさに言えば、世界の記号化・抽象化に、対抗するのが芸術家なのです。

 そのためには、自分自身がどのような先入観を持っているか、たえず点検する必要があります。

 そして、デッサンが上達するとは、先入観を削る作業に他ならないのです。    

山田宏哉記

追記。 これは当然、デッサン以外の分野にも通用する事柄です。

2006.12.31

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