(1535)

  「あなたのことをもっと知りたい」

 「コミュニケーション能力」ということが万能薬のように言われます。  その割に、どうしたらコミュニケーション能力を磨くことができるか、ということはあまり言われません。

 就職活動の面接でも、「コミュニケーション能力がある(ない)。だから、(不)採用!」とかね。こうなると、「コミュニケーション能力の欠如は死ななきゃ直らない」と言わんばかりです。

 「挨拶は元気よく」とか、「クリアカットに発音する」とか、マニュアル的なことは色々言われるけれども、「コミュニケーション能力の一番基礎にあるものは何か」ということが、案外、見過ごされています。

 思うに、コミュニケーション能力の基礎にあるのは、「あなたのことをもっと知りたい」という気持ちです。コミュニケーション能力の欠如として致命的なのは、「他人に関心がない」ことです。

 「他者への関心」は、自動車でいえば、エンジン部分に相当します。  他者への関心がないのに、「敬語がどうこう」という話は、エンジンが搭載されていない自動車で、ドアの開閉具合を議論するようなものです。

 男女の機微でいう「性格がいい」とは「常に相手に関心を払っている」ことだし、いわゆる「モテる人」というのは、必ず狢昭圓亡愎瓦鮖って、それを言動として表している人瓩任后

 わかるかな。詮索や尋問にならない範囲で、「あなたのことをもっと知りたい」「あなたともっとわかりあいたい」というのが、コミュニケーションの初歩なのですよ。

 こんなことは、当たり前すぎて誰も教えてくれません。 だからといって、「お前に言われたくない」という感じでしょうが。

 ただ、この気持ちさえあれば、各種の表現技術は、後からついてきます。  もちろん、人により、円滑に習得できたり、不器用でなかなか身につかなかったりはします。だけど、隣人への関心がある限り、コミュニケーション能力が後退することはありません。

 これに比べれば、口下手であるとか、そんなことは取るに足らない些事なのです。

山田宏哉記

P.S. では、他者に関心がない人はどうすれば? 自閉症でも本人が幸福なら、まぁいいのではないでしょうか。ただし、そんな人はこうして僕の随想を読んでいないでしょう。

2007.11.8
 手紙一覧へ戻る 文筆劇場・トップ