ジョン・スミスへの手紙
 サイバー・ラボ・ノート (1844)

 職業選択は人生最大の問題か?

   物心ついたときから、人生最大の問題は「何を職業とするか」にあると思ってきました。明瞭に言語化されないまでも、何をしてお金を稼ぎ、生計を立てるかということこそ、最も大切な選択だという直観に似た確信がありました。

 僕は今の今でも、この確信が間違っているとは考えていません。

 中学時代から、会社組織に雇われるのではなく、徹底的に個人の能力で処遇(評価と報酬)が決まる職業につきたいと考えてきました。

 そのために、卓越した技術や知識、場数(経験)が必要だということも、わかっていました。

 プロフェッショナルになるために、研鑽を惜しむつもりはありませんでした。しかし、僕自身は、間に合わなかった。実力が足りなかったのでしょう。妥協して会社員になりました。

 後は、大きくは、現実を引き受けて粛々と生きていくか、喀血の日々を送るかという選択しかありません。

 職業選択は、人生最大の選択だというのに、ある程度、運任せにせざるをえないという皮肉があります。」

 僕も、編集記者職が内定取り消しにあったり、零細不良出版社の「正社員前提の編集アルバイト」に騙されて、職業選択に致命的な狂いが生じました。

 人生最大の問題が、自分の裁量の及ばない偶然によって決められるというのは、まさに不条理そのものでしょう。

 ただ、多くの人は、「仕方ない」の一言で片付け、現実に従うという賢明な態度をとります。「夢は破れたが、自分を必要としてくれる場所がある。ならばそこで全力を尽くそう」と。あぁ、涙が出るほど立派な大人だ。

 「好きなことを仕事にしたい」という若者には、大抵、「現実は甘くない」「お前には才能がない」というシニカルな態度をとるくせに、どこかで自分の可能性を信じている。

 血を吐くような生活を送ることになろうと構わない。ガキと言われようと、爛汽薀蝓璽泪"として人生を終えるなど、到底、受け入れられることではありません。

 追記. 職業選択は人生最大の問題か? 答えはノー。「人生最大の"闘争"」の間違いです。

山田宏哉記

 2008.10.11
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