ジョン・スミスへの手紙
 サイバー・ラボ・ノート (1888)

  平凡なサラリーマン、趣味は読書

 会社の業務以外の時間は、ほとんど「人に言えないようなこと」「人に言いたくないこと」ばかりしています。その中で「柔軟体操と読書」は一般常識に合致するので、自信を持って答えられます。

 僕の表の顔は、「平凡なサラリーマン。趣味は読書」です。確かに不十分な情報かもしれませんが、嘘はついていません。

 余計なことを勘ぐられたくない(しかもそれが誤解とは限らない)ので、大学に在籍していることは、自分からは言いません。

 ポッドキャストやラジオサーバーのヘビーユーザーであることも、普通の人には理解不能なので、言いません。当然、文筆やウェブ製作のことも言いません。

 「他人に対して不誠実だ。もっと自分をさらけ出せ」と言われれば、その通りかもしれません。しかし、僕の言い分も聞いてくれ。

 そもそも人間は、自分の理解の枠組みの中でしか、他人を理解できないのです。そして、理解できない人に対しては、得てして本能的に恐れや警戒感を抱きます。自慢したい気持ちが先走って、墓穴を掘る例は枚挙に暇がありません。

 「暇なとき、何してる?」という質問に、バカ正直に答えるなら「暇な時間は一切ない」です。しかし、それでは人間関係がギスギスして持たないでしょう。だから、「暇なときは、読書をしています」と答えるのです。

 庶民向けの答えとしては絶妙でしょう。

 挨拶代わりに「景気はどう?」と聞かれて、「今月は営業利益が100万円で、前月比10%減です」と答える義務はありません。「ぼちぼちでんな」でいいのです。僕の受け答えも、それと同じです。

 相手だって、何も「常に社会で勝ち抜くために何をすべきか戦略を考えています」というような猝鄂甘な答え瓩魎待しているわけではないでしょう。

 だから、相手が適当に相槌を打てることを言えばいいのです。これを不誠実というなら、人間社会は回らないぞ。

 僕は、核心的な話は、ウェブで時間コストを払ってでも、僕の文章を読みたい、話を聞きたいという人に対してすると決めています。挨拶代わりに聞かれても、バカ正直に答えるわけがないでしょう。

 僕は平凡な新入社員のサラリーマンで、趣味は読書です。これで何が悪い! むしろ、わかりやすく自分を説明していて、親切といえるでしょう。

 追記. 「マイホームが夢です」とまではさすがに言いません。

山田宏哉記

 2008.11.16
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