ジョン・スミスへの手紙
 サイバー・ラボ・ノート (1936)

 アベレージとメジアンの使い方

 日本の義務教育を受けて育った人の中で、"平均"(アベレージ)という数学的概念を知らない人はいないと思います。平均身長から平均年齢に至るまで、日本人は何かと平均を気にします。

 反面、"中央値"(メジアン)という概念は、利用価値の高さに比べて、あまり有効活用している人が多くないように思います。

 例えば、ある零細不良出版社の社員の平均年収を計算するとします。

 まず、ワンマン社長が年収1億円。その他の平社員9人が年収300万円だったとしします。

 すると社長を含めたこの企業の社員の平均年収は、約1270万円となります。では、学生に対して「当社の従業員の平均年収は1270万円です!」と募集広告をかけるのは誠実な行為と言えるでしょうか。

 確かに、嘘をついてはいませんが、平均年収1270万円という数字は、何の実態を反映していません。そもそも年収500〜1500万円の社員がひとりもいないのに、それはないでしょう。

 対して、年収で真ん中の順位にくる社員の年収(=中央値)は「300万円」とはじき出されます。そして、「この零細企業で働くごく普通の社員の年収は300万円です」と言えば、ほぼ実態を反映していると言えるでしょう。

 ある企業の年収の平均は、大抵、中央値よりも高くはじき出されます。それは企業の地位と報酬がピラミッド構造をしているからです。

 平均年収の600万円の企業に入社したとして、「自分も平均年収くらいは稼げるだろう」と楽観視するのは誤りです。よくある話、高額な役員報酬が平均年収を押し上げているだけで、普通の社員は年収400万円くらいだったりします。

 マニアックな説明になりますが、平均が大きな意味を持つ環境は、平均値を中心に、上にも下にも同じように数値が分布しているときです。

 ピラミッド構造の組織のように、歪んだ形でデータが点在している場合、平均だけでなく中央値も参照すること絶対に必要です(今はスプレッドシートで簡単に平均値も中央値も計算できます)。

 平均身長には意味がある(例えば成人男性であれば、170CMを中心に上下に同じくらいの人数がいる)けど、毎月の平均読書冊数には意味がない(数値の分布がピラミッド構造をしているので)。

 これくらいの数字を扱うセンスもないことには、人生、一方的に騙されて終わりますぜ。

 追記.  本来、平均値と中央値の使用方法も知らずに就職活動や資産運用をするのは、自殺行為としか言いようがないのですけどね。とはいえ、「馬鹿ゆえの蛮勇」も捨てたものではありません。

山田宏哉記

 2008.12.18
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