ジョン・スミスへの手紙
 サイバー・ラボ・ノート (1939)

 あっ、人間が活躍している/劇団四季の魅力

 機会があって、劇団四季のミュージカル「55STEPS」に行ってきました。四季のミュージカルに行くのは、これが二回目です。そして、前回同様、なぜか涙が出てしまいました。

 感動というと、手垢にまみれた表現なので避けますが、ある種の感情を揺さぶられたことは確かです。

 劇団四季のミュージカルで、なぜか涙が出てしまう人は少なくないと思います。しかも、その理由がよくわからない。おそらく普通の人は、四季のミュージカルについて、「とてもよかった」ということ以上には、言語化することができない。

 そこで、私の出番です(とか書くから世間受けが悪いのでしょう)。

 言葉にすれば、舞台の上で役者が音楽に合わせてクルクルと回っているだけなのに、なぜか涙が止まらなくなってしまう。これは一体、何なのでしょう。

 おそらくそれは生の身体表現の力です。重力と人体の関節構造という制約の中で、身体能力の可能性を極限まで突き詰める。その結晶である身体表現を目の当たりにするとき、意味を超えて、自然と涙がこぼれてきます。

 実際、劇団員の身体能力の高さは、驚愕に値します。爛好檗璽弔得意瓩箸い辰織譽戰襪箸倭瓦別次元にあります。そのこと自体が「よくぞ、ここまで練り上げた」という感動の対象です。

 ですので、劇団四季の魅力の核心は、「人間って、ここまで自由に動くことができるんだ」という新鮮な驚きと、「その舞台の上の俳優と同じ人間であることの嬉しさ」にあると僕は思います。

 そのせいかどうか知りませんが、四季のミュージカルにはよく人間以外の動物が登場します。その仕掛けによっても、観客は自分が人間であることを否応なしに意識することになるのです。

 日食を見ると、自分が地球という宇宙に浮かぶ球体に生きていることを実感すると言われるように、劇団四季のミュージカルを見ると、自分が直立二足歩行をするホモ・サピエンスという生物種だということが理屈を超えて、身体でわかる。

 それこそまさに、劇団四季の魅力なのではないでしょうか。

 追記. 入場料は決して安いとは言えませんが、一度は(何度でも)観にいく価値があると思います。

山田宏哉記

 2008.12.20
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