ジョン・スミスへの手紙
 サイバー・ラボ・ノート (2312)

 【実務家の批評】マクロ情報をどう活かすか?

 9月の後半から10月の初旬にかけて、碌にニュース報道の類に接していません。

 平日の朝、徒歩15分の通勤途中に読売新聞と日経新聞のポッドキャストを聴いていたくらいです。だからと言って、特段に困ることもありませんでした。

 学校的な教育配慮からすると、「新聞は複数のものに眼を通し、世の中の出来事に関心を持ち、複眼的な視点を身につけることが大切だ」ということにでもなるのでしょう。

 しかし例えば、朝日新聞と産経新聞の社説を読み比べて、「朝日は"左"でけしからん。産経は保守精神を体現していて素晴らしい」などと寝言を言うのは、所詮は趣味の世界です。

 ご老体の痴呆防止には役立つかもしれませんが、実務の最前線で闘う人間は、いちいち一般紙の社説にケチをつける程、暇ではありません。

 だから、仕事やカネと縁のない連中ほど、何かと世の中の出来事に詳しく、何を間違ったのか"義憤"や"愛国心"を発露させるのです。この辺は、仕事のできないタイプの高学歴者が陥りやすい罠です。

 では、実務家はどのように世の中全体の流れを把握すべきなのか。そのとき、情報源としてマスコミに依存するのは、ある程度は仕方がないでしょう。

 僕自身は、仕事で使う情報は、日経4紙と日経BP(『日経ビジネス』など)のデータベースから、必要に応じて取り出しています。

 もう少し突っ込んで言うと、普通の会社員にとって、マクロ情報が役に立つのは、主として他者とコミュニケーションを取る際のネタや題材になるという意味においてです。

 あるいは自分の主張を通したいときに、「昨日の日経にも書いてありましたが」と言えば、多少、説得力が増すということでしょう。

 情報そのものが役に立つのは、日経産業新聞のような専門紙の記事に限られるのが普通です。

 また、僕の仕事は、情報の速報性が業績に直結することはないので、リアルタイムで報道を追うということは、ほとんどしません。

 ニュースを追うだけで、見識を深め、何か一仕事をしたような気分になるのは、仕事ができない人の典型的な特徴です。

 ただし、教育の世界では、こういう姿勢が評価されるのは、覚えておいて損はありません。

 何しろ情報収集をする方が、エクセルで関数を駆使して数字を合わせたり、タフな交渉をするより、断然、楽ですもん。

 人間、易きに流れるもので、放っておくと際限なくマクロ情報を追い求めて、仕事をした気になってしまうのです。

 むしろ、「マクロ情報は役に立たない」と割り切って接する方が、結果的にマクロ情報を使いこなせるのではないでしょうか。

   追記. たぶん誰も教えてくれませんが、「新聞を読むのは暇人である」というのは、隠れた社会人の常識です。

山田宏哉記
 
 2009.10.7
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