ジョン・スミスへの手紙
 サイバー・ラボ・ノート (2348)

 さて、あの人は「金持ち父さん」だったのか

 大井町のフェミレス・ココスでポメラで、この原稿を書いています。隣の席で胡散臭さ満点の話題がなされていて、笑いをこらえるのに必死です。

 簡単に状況を記します。

 隣の席にいるのは4人組。私服のリーダー格の男(たぶん、30代)が子分のスーツ男を従えて、「カモ」のスーツ姿の2人と向き合っていました。

 「カモ」の2人は、おそらく会社に入ったばかりの新入社員でしょう。可哀想なほど、礼儀正しく、恐縮していました。

 リーダーの言葉を、必死でシステム手帳にメモしています。

 テーマは、「ビジネスの仕組みを手に入れる」「4年後に4億円」。

 「Bクワドラント」「左側の人(従業員)」「ビジネスオーナーや投資家」などの単語が出ていることから判断すると、ロバート・キヨサキの「金持ち父さん」などをネタ元にしてたセミナー(イベント)でしょう。

 単語の端々から概要をつかんでしまう僕も僕ですけれども、こういうことを口に出して議論するというのは、結構、気持ち悪いものがあります。

 どうやら週末に、関西で「大切なイベント」が開かれるらしく、哀れ、蒲田在住の標的新入社員は誕生日と重なってしまったのでした。

 もうひとりは、「今、(参加費の)カネがない」ということで迷っているようでした。

 「4年度の4億円と今の1万円を比べているのだ」というリーダーの言葉から、参加費は1万円だと推察できました。

 なるほどね。会社生活に馴染めない新入社員に、「投資家、ビジネスオーナーになって、大成功する方法」をセミナーとして教えるというのは、結構、いい商売になるかもしれません。

 冷静に振り返ると、僕自身、投資家(株主)であると同時にビジネスオーナーでもあります。

 そうだよな。おそらく多くの新入社員にとって、実社会の厳しさは、想像以上でしょう。そんな時、「金持ち父さん」の話は、本人の自尊心を傷つけないように、逃げたい気持ちをうまく合理化してくれて、とても魅力的に見えます。

 うーん、僕にもそういうサービス精神があったなら、もっとお金を稼ぐことができるのになぁ。そういう人たちを、下層貧民とか呼んでバカにしていたら、商売になるはずがありません。

 そうだよみんな、「左側」のラットレースから抜け出して、「Bクワドラント」に行かなくてちゃダメだよ。「君は悪くない。大丈夫、やればできる。強く信じれば、夢は叶う。ただし、私にお布施すれば」。

 さて、ターゲットの2人が帰った後の、リーダーの緊張感の抜けぶりがまた面白かった。「未熟だ」と言って、ソファに寝転がったりしていました。  

 ただし、標的が帰って子分と話すときも、結構、生真面目なビジネス話が続いていたので、案外、真正の「金持ち父さん」なのかもしれません。

 実際、「優先順位をつけろ」「(成功しようと思ったら)土日に遊んでいる暇はない」などのリーダーの言葉は、正しいことを言っていました。

 ははは、胡散臭さに笑いをこらえつつも、いろんな意味で勉強になりました。

   追記.ついでに、大井町駅近くのココスの空間は、結構、気に入りました。

山田宏哉記
 
 2009.10.24
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