ジョン・スミスへの手紙
 サイバー・ラボ・ノート (2359)

 新米ソルジャーの死亡率/『小部隊指揮官バイブル』

 今、柘植久慶(著)『小部隊指揮官バイブル』(PHP文庫)を興味深く読んでいます。「小部隊のリーダーとして戦場で勝つ(生き残る)」ことに(のみ)焦点を当てた書籍ですが、ビジネスとの共通点も結構あります。

 組織原理として、2つのほど、非常に重要なことが書かれています。

 まず、「組織の中で、誰の負担が一番大きいのか」という問題です。一般的には、「階層が高くなるほど、責任が重くなり大変になる」と言われます。僕は、「これは違う」と考えています。

 責任の重さと、負担の大きさは必ずしも正の相関関係にあるわけではありません。

 戦場で考えれば、「自分の生命を落とす可能性が高い人」ほど負担が大きいと言えます。違いますか。最前線の兵士たちは、責任はほとんどありませんが、負担は極めて重いと言えるでしょう。

 それに比べると、安全な後方基地で戦略や作戦を立案する仕事は、責任は重いですが、自分が死ぬわけではないので、負担はさほど重くありません。

 ファーストフード店で一番負荷が高いのは、実は牛丼の注文をとって回って調理したり、レジで接客する仕事です。多くは、アルバイト店員が担っています。変な客がクレームをつけてきたりしたら、面倒なことになります。

 それに比べると、「店舗の展開戦略」などを考える仕事は、責任としては重いですが、作業自体は随分と楽なものです。階層が上の人間は、「こっちも大変なんだ」と言いますが、決して「立場を交換してくれ」とは言いません。

 そして「新米ソルジャーほど死亡率が高い」という問題があります。新兵は経験が浅いので、頭を上げてはいけない場面で頭を上げて頭部を撃ち抜かれたり、火器を誤作動させたり、敵の罠にひっかかりしやすいわけです。

 ただし、このハードルを突破すれば、場数を踏むことで兵士としての実力も格段に高まり、死亡率はグッと低くなります。

 新兵を新入社員と言い換えると、組織の問題が見えてきます。新米社員が実力をつけるためには「場数を踏む」ことが不可欠ですが、まさにその「場数を踏む」というプロセスにおいて、「死亡事故」が起こりやすいのです。

 「最近の若者は3年で3割が辞める」ということがよく言われます。その際、あまり言われないことは、実は"最初の3年"こそが、最も負荷の高い時期だということです。

 以上、組織で働く人間にとって、踏まえておいてもよいことではないでしょうか。

   追記.それにしても、「階層が高くなるほど、責任が重くなり大変になる」というのは、強者にとって都合のよい常識です。

山田宏哉記
 
 2009.11.4
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