ジョン・スミスへの手紙
 サイバー・ラボ・ノート (2360)

 労働貧民につける薬

 "ワーキング・プア"と呼ばれるような労働貧民に対して、「真面目に働いていない」とか「根性がない」という非難を浴びせるのは、間違っています。

 目下の経済構造として、介護職員や小売業の店頭スタッフやタクシー・ドライバーをやっていては、労働貧民から抜け出すことはできません。しかし、これらの仕事の負荷が軽いかと言えば、むしろホワイトカラーの事務職よりも重いというのが現実です。

 僕は、新宿の大型書店の2階雑誌売場でアルバイトをしたことがあります。あまりのきつさに2週間で辞めました。それでいて、時給\875だったと記憶しています。もっとも、どんどん人が辞めていく職場で、「根性なし」だったのは僕だけではありません。

 あるいは、日雇い労働者として、延々と重い荷物を運ぶ作業も大変でした。一瞬の油断が大怪我につながる危険もあります。そして翌日は筋肉痛との格闘です。それでいて、9〜5時で働いて\6,000〜\7,000の収入でした。

 今は、当時よりも多くの収入を得ていますが、だからと言って、大型書店でのアルバイトや日雇い労働が「今と比べれば楽だった」というわけではありません。

 多くの人が「真面目に働いても経済的に豊かになれない」と愚痴をこぼします。これはある意味で当たり前のことです。

 この経済社会の中で、収入とリンクするのは、「責任と権限の大きさ」であって、決して「負担の大きさ」ではありません。この区別は、極めて重要なことです。

 労働貧民に足りないのは、端的に言えば「職務上の責任と権限」であって、必ずしも「根性」とか「勤労意欲」とか「負荷の大きさ」が足りないわけではありません。

 本当の話をしましょう。「真面目にコツコツ働けば、金持ちになれる」というお人好しな発想そのものが、既に決定的に間違っています。経済的に豊かになるために必要なことは、ズバリ「権力(利権)闘争に勝つこと」です。

 幼い頃から真面目に勉強し、同級生よりもいい成績を取り、受験戦争を勝ち抜き一流大学に進学し、医者や弁護士になる。組織で働くなら、就職戦線で勝ち残り、一流企業のビジネスパーソンや国家公務員になる。

 おそらくこれが、最も再現性の高い「経済的に豊かになる方法」です。

 そして、権力闘争に背を向け続ける限り、どんなに一生懸命働いても、お金持ちにはなれないでしょう。

 もちろんこれは、経済社会のシステムの話であって、人間としての倫理や美学とは全くの別問題です。

   追記.普通、こういう露骨な話はしないものですが、つい口が滑ってしまいましたとさ。

山田宏哉記
 
 2009.11.7
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