ジョン・スミスへの手紙
 サイバー・ラボ・ノート (2361)

 仕事の難易度と報酬、そして敗北の代償

  『THE21』という雑誌の2009年5月号に、大前研一氏が次のような一文を記していました。

 <いっておくが、給料が高い業界のほうが、難しい仕事をしているわけではないのである。コンサルタントとしてあらゆる業界をみてきた私の実感では、仕事の難易度と給与水準はむしろ反比例の関係にある。>

 この部分は、本論というより余談に属する箇所ですが、僕からみると、極めて重要なことを言っています。

 仕事の難易度と報酬の関係から言って、おそらく最もコストパフォーマンスが高いのが、企業の「顧問」とか「相談役」といったポストに就くことです。

 株主から経営責任を問われることなく、膨大な報酬を手にすることができます。実質的には社長より格上の場合が少なくありません。

 仕事内容と言えば、せいぜい新聞を読んで、経営陣と雑談するくらいです。

 意外と誰も言いませんが、一般にアルバイトは、仕事の難易度としては高い部類に属します。なぜならそれは、本当に必要とされている仕事だからです。

 普通の人は、街頭でのティッシュ配りやビラ配り、あるいはインチキ商品の訪問販売などのアルバイトをバカにしがちです。しかし、このような仕事の精神的なストレスたるや、大企業のホワイトカラー以上のものがあります。

 だからこそ、僕は自分に吉野家やコンビニの店員や、建築現場や港湾の作業員が務まるとは考えていません。資質や能力の面で、おそらく不可能です。

 しかし、「一流企業の社長をしろ」とか「厚生労働大臣をやれ」とか言われたなら、おそらく明日からでもできます。地位と報酬が高くなるほど、仕事そのものの難易度は低くなるからです。

 繰り返しますが、「こんなに一生懸命頑働いているのに、どうしてお金持ちになれないのだろう?」という疑問はナンセンスです。

 難易度が高く、負荷が重い仕事ほど、低収入なのです。多くの人は、これを不公平だと感じるでしょう。しかし、これが現実である以上、愚痴を言っても何も始まりません。

 要するに、「難易度が低く、負荷が軽く、高収入の仕事」に就くための権力闘争に敗れたことが、すべての元凶なのです。この競争は、実質的には20歳の段階で既に勝負がついています。

 今現在、薄給激務で死にそうになりながら働いている人は、ある意味、人生の初期段階における"敗北のツケ"を支払わされていると言えます。

 高校時代に真面目に勉強すれば一流大学にいけたのに、不良を気取って高校を中退してしまった。だからもう一生、「難易度が高く、負荷が重く、低収入の仕事」を続けていくしかない。

 それが嫌なら起業や海外脱出という道もありますが、その多くは人生の破綻に行き着きます。

 こんな閉塞感があるからこそ、自爆テロで人生を打開(終結)しようとする人が出現するのは、ある意味、やむを得ない面もあるのです。

   追記.ひどい社会だと思うかな。でも忘れてはならないのは、こんな社会にしたのは、他ならぬ僕たち自身だということです。

山田宏哉記
 
 2009.11.7
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