ジョン・スミスへの手紙
 サイバー・ラボ・ノート (2368)

 スケアクロウ  

「スケアクロウ」という音の手触りは素敵だと思わないでしょうか。

 実際、映画や楽曲のタイトルやバンド名にもなっている言葉です。

 同様に音色が好きが語彙として、「ガゼル」「ハイファイ」「へルター・スケルター」「フルメタル・ジャケット」「スカイ・クロラ」などがあります。「スカイ・クロラ」に至っては、「スケアクロウ」と音色的にほぼ同じです。

 以上は、ほぼ完全に音に対する感性あるいは好みの問題です。強いて共通項を言えば、尖っていて、鋭角的なイメージを帯びている音の並び方だと言えます。

 論理的には説明不能です。それでも上記のような音色が気に入る人は、おそらく僕とリズム感が合うと思います。

 ミュージシャンが作詞・作曲をする場合、歌詞を先行させるか、曲を先行させるか、ということが、よく議論されます。

 しかし、僕はこれまで寡聞にしてアーティスト当人が、「歌詞を先行させて、作詞・作曲をした」と答えた場面を聞いたことがありません。

 まずリズムとメロディが存在する。言葉はその上に乗るものであって、言葉にリズムとメロディをつけるわけではありません。極端な話、ロックの歌詞なら別に「あぅあぅあぅ。おぅいぇ、おぅいぇ」だけでもいいのです。

 一般にポピュラー・ミュージックへの批評は、歌詞の意味を偏重し過ぎています。

 訴求力にとって、意味は二義的なものです。

 リズムとメロディに欠ける言葉は、いくら内容的に正しいものであっても、相手に伝わることがありません。例えば、個人的に口説き文句は、「抱きたい」で充分だと思います。

 予め考え抜かれていて、レコーダーが再生するような言葉は、素直ではありません。

 舞台裏を明かせば、僕は今、相当に音色とリズム感を重視した文章の書き方をしています。具体的には、句読点の打ち方や一文あたりの文字数は、結構、厳しくマネジメントしています。

 情報を過不足なく正確に伝えることができるというのは、大前提です。しかしそれは、会話や文筆の初級課程です。

 ただし、その水準をクリアしたならば、やはり「どれだけ言葉そのものを、リズムやメロディと組み合わせて心地よいものにできるか」にこだわるべきです。

 その時、ミュージシャンが作詞・作曲するプロセスから学ぶことは、非常に多いと僕は考えています。

 ちなみに、スケアクロウは「案山子(かかし)」という意味です
 
 追記.I am a scarecrow that loves you.(僕は君を愛するスケアクロウだ)とでも書けば、ちょっと癖の強いラブソングのサビのフレーズにもなりそうですね。

山田宏哉記
 
 2009.11.13
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