ジョン・スミスへの手紙
 サイバー・ラボ・ノート (2381)

 東京の中の辺境/森達也(著)『東京番外地』

 森達也(著)『東京番外地』(新潮社)を読みました。  森さんが東京の中の「普通の人があまり行かないところ」を編集者と探訪した記録です。ですので、「裏東京案内」の感があります。

 探訪地として具体的には、東京拘置所、歌舞伎町、松沢病院(精神病院)、東京タワー、山谷、後楽園ホール、品川屠場、東京入国管理局などがあります。全体的に、"死"の臭いが濃厚な場所が多いように感じます。

 歌舞伎町、松沢病院、山谷、後楽園ホールなどは、僕自身も訪れたことがあり、それぞれ印象が残っています。

 対照的に、東京拘置所や品川屠場などは僕にとって全くの盲点でした。

 東京拘置所といえば、鈴木宗男氏や佐藤優氏が不当逮捕されて拘留された場所です。死刑囚が収容されているのも、刑務所ではなく、拘置所なのですが、たぶん普通の人は刑務所と拘置所の区別もついていないでしょう。

 僕も将来、お世話になるかもしれません。

 屠場とは、牛や豚などの家畜を近所のスーパーに並ぶ肉片に解体する場所です。以前は、屠殺場と呼ばれていました。

 現代に置いては、「屠(ほふ)る」という単語は、あまり使ってはいけないようです。「殺」という単語も物騒だ。だから、「と場」(とじょう)と表記するようです。

 「と場」だよ「と場」。これでは何のことだかわかりません。「人間は家畜を屠殺して生きている」というシンプルな現実は、あまり正視してはいけないことのようです。

 ニコラス・ゲイハルター監督のドキュメンタリー映画『いのちの食べかた』では、家畜が解体されていく一部始終を克明に記録しています。大人であれば、是非、観てください。

 上記のような事情は、森さん自身、詳しく記しています。

 あまり愉快な本ではないけれども、場所というものを通して、社会が抱える問題を活写する貴重な書物だと思います。そして、気になった場所には、実際に足を運んでみるのがいいと思います。

   追記. そういえば、人間がバラバラにされると大ニュースですが、家畜がバラバラにされても何のニュースにもなりません。

山田宏哉記
 
 2009.11.22
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