ジョン・スミスへの手紙
 サイバー・ラボ・ノート (2407)

 【知のOS】リアルタイム・ピットフォール

 先回、「マスコミ関係者以外、基本的に日々のニュースはフォローする必要がない」という話をしました。

 今回は、思考のピットフォール(落とし穴)として、「なぜ人はリアルタイムに惹かれるのか」あるいは「なぜ人はリアルタイムの情報にアクセスできないと不安になるのか」という点を掘り下げて考えてみます。

 主たる理由は、「動物時代の警戒心の名残が遺伝子に組み込まれているから」だと僕は考えています。

 ほとんどの動物にとって、最も重要な情報は「捕食者が襲ってきた」というものです。この情報は、1秒でも速く入手する必要があります。情報を掴み損ねて、逃げるのが遅れた個体は、食物連鎖の上位者の餌となり、淘汰されます。

 僕たちも、そういう環境の中を生き抜いてきた個体の子孫だと考えると、1分1秒でも速く情報を入手しようというのは、ほとんど本能だと言うこともできるでしょう。

 ただし、現代社会においては、「街を歩いていたら、ライオンに食べられた」とか「学校のプールで鮫が子供たちを食べていた」といったことは、滅多に起こりません。よほどのヘマをしない限り、生命そのものは、かなり高い確率で保障されています。

 そのような環境で、かつての動物時代のように警戒心を働かせることは、時間とエネルギーのロスが大きすぎる。

 次々と最新ニュースと新着メールをチェックするような生活は、その精神性において、人間よりも動物に近いと言えます。

 例えば、メールを出して、「まだ返信が来ないか」と何度も"問い合わせ"をするとき、僕たちの感情を支配しているのは、極めて動物的な不安感です。

 30分間、「メールの返事がまだ来ない」と新着メールの問い合わせを連発する人は、どう考えてもバカでしょう。普通なら、その30分を使って、もっと有益なことをするべきだと考えます。

 しかし、人間、油断するとリアルタイムのピットフォールにはまって、動物的本能に基づき、30分間、新着メールの問い合わせをするだけで浪費してしまうのです。

 しかも、そのメールの内容が「昨日は楽しかったね」とか「これからもよろしくね」といったどうでもいい内容だったら、笑えます。ははは、返信メールが来ない焦燥感で、"昨日の楽しさ"も吹き飛んだりしてね。

 「新着メールの問い合わせ」を「最新ニュースのチェック」と言い換えても構いません。構造はほぼ同じです。いやむしろ「最新ニュースのチェック」と言うと、何か有意義なことをしたと、自分を誤魔化せてしまうので、より危険とも言えます。

 人間として冷静に考えれば、返信メールが届くのが、3分後だろうと、3時間後だろうと、3日後だろうと、別に大した違いはないのです。

 確かに、毎日、空襲によって東京が爆撃されるようなことがあれば、1分1秒を争って情報収集をする必要があります。しかし、それほどの危機的状況が起きることは、ほとんどありません。

 僕たちは、1分1秒を争って、マスコミ報道を収集をする必要があるのか、キチンと精査することが必要です。

 追記. 今後も、ツイッターを利用して、リアルタイムのピットフォールを喧伝していきます。

山田宏哉記
 
 2009.12.13
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