ジョン・スミスへの手紙
 サイバー・ラボ・ノート (2409)

 【実務家の批評】思考のロジック―直列から並列へ―

 三段論法という有名な論理の筋道の立て方があります。

 1.人間は必ず死ぬ。2.ソクラテスは人間である。3.よって、ソクラテスは必ず死ぬ。そんなところです。

 上記を持って、"論理的思考"や"ロジカル・シンキング"だと思い込み、「このような思考法をビジネスに活かすべきだ」と本気で考えているなら、自分の思考の浅さを反省した方がいいでしょう。

 三段論法のピットフォールは、結論がありきたりなことです。そして、時間を食うことです。

 1.鳥類は羽を持つ。2.ハトは鳥類である。3.故に、ハトには羽がある。冷静に考えると、極めて当たり前のことで、「だからどうした」という話です。

 ですので、三段論法のような直列的な思考は、頭の体操あるいは知的遊戯のためのものです。実務で使うことはほとんどありません。

 例えば、上司から「この資料のコピーをとっておいてくれ」と指示を受けたとする。

 これを三段論法で処理するとどうなるか。

 1.紙はコピー可能である。2.この資料の材質は紙である。3.故に、この資料はコピー可能である。10分かけて出た結論がこれでは、全く無益です。

 例えば、コピーを頼まれたら、「部数、期限、縮小/両面印刷の有無、パンチ穴/ホッチキスの有無」等を、即座に同時並列的に検討し、確認が必要な部分は相手に確認し、自明な部分は自分の判断で処理します。

 実務の世界で肝心なことは、「細部を確定させる」ことです。必要な情報が与えられなかった場合、確認が必要か、自明であるかの判断は、合理的な推論によって決めます。

 合理的な推論とは、わかりやすく言えば「誰にでも(頭の悪い人にも)理解できるような説明」のことです。

 「コピーを取る」という単純作業においても、「予め確認するべきポイントがわかっている」ということと、「足りない情報を瞬時に(1〜3秒で)見抜く」という瞬発性が前提になっています。

 これも知的能力の一種ですが、ペーパーテストで高い得点を取る能力(主として直列型の思考が必要)とは若干ずれています。だから、「東大卒は仕事では使えない」といった嫉妬まみれの発言がなされたりします。

 ただし、実務で使える思考のロジックがあるとしたら、あくまで上記のような同時並列的なものです。

 追記. ちなみに、「足りない情報を瞬時に見抜く」ためには、色々と必要な条件があるのですが、それはまた別の機会に記します。

山田宏哉記
 
 2009.12.15
 記事一覧へ戻る 文筆劇場・トップ