ジョン・スミスへの手紙
 サイバー・ラボ・ノート (2413)

 【実務家の批評】社外活動の罠

 組織でビジネスパーソンで、本格的に社外活動をしている人は、職場ではそのことを口にしないというのが鉄則です。余計な反発を受けるだけと考えた方が賢明です。

 法律や就業規則に違反しない限り、社会人が就業時間外に何をしようと、組織の関知するところではありません。もっと言えば、何の関係もありません。雇用契約とはそのようなものです。

 しかし、そうは考えないの世間の人々です。例えば、トヨタに勤務している人であれば、周囲の人は「あの人はトヨタの社員だ」などと勝手にレッテルを貼ります。

 確かに、勤務時間中はトヨタ社員でしょうが、それ以外の時間にまでトヨタ社員のレッテルを貼られるのが嫌な人もいるでしょう。

 休日にレストランで食事をしていて、少し行儀の悪い食べ方をしたら、「トヨタ社員としていかがなものか」などと言われたら、いい気分はしないでしょう。こんなことで、会社にクレームとして入れられたら、最悪です。

 あるいは、トヨタ社員が休日にパチンコやキャバクラに行ったとしても、そんなことは個人の自由です。共産党員として活動していようと、おかしな新興宗教の信者だろうが、個人の自由です。

 それを「トヨタ社員としていかがなものか」などと言われたら、面倒くさいことこの上ないでしょう。上司に告げ口でもされたら、最悪です。

 なぜ日本人は、勤務先の組織をその人のアイデンティティとして規定するのか。おそらくは、個人主義が成立していない国の悲劇です。

 一応、日本は思想と言論の自由が保障された国です。

 いくら僕が自分のウェブサイトに、(一見)過激で反社会的なことを書こうと、企業の守秘義務といくつかの法律に違反しない限り、それは個人の自由です。

 もちろん僕が、企業の広報戦略の一環としてウェブ製作をしているなら、自分勝手な言い分を通すのは許されないでしょう。

 しかし、勤務時間外に、個人として公表している見解に対して、「会社に言いつけてやる」みたいな反応を示すのが、悲しき日本人の性のようです。

 法律と就業規則に違反していない限り、社会人が余暇に何をしようと自由です。

 とはいえ現実には、それを理解しない未開人たちが、「足元をすくってやろう」と跋扈しています。

 無用な反感を買って、「あの人は社外秘の情報を個人ブログに書いている」などと会社の人事部にデマを流されるだけで、下手をすると出世街道を外れ、リストラ候補者になるでしょう。実際、権力闘争とはこのようなものです。

 そして、このような勢力から身を守ることは、案外、大変なことです。組織で働くビジネスパーソンなら、「休日は散歩しています」くらいの情報開示が、ちょうどいいでしょう。

 追記. 会社一筋の人が、バリバリと社外活動をしている人に昇進で遅れをとったら、やはり面白くないでしょう。

山田宏哉記
 
 2009.12.19
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