ジョン・スミスへの手紙
 サイバー・ラボ・ノート (2433)

 "カリスマ経営者"の企業は働く場所か

 世の中には、"社長が有名"という企業が結構あります。

 あえて日本企業の名前は出しませんけれども、「アップルといえばスティーヴ・ジョブズ」のような会社です。

 "カリスマ経営者"がいる企業は、投資対象としては、魅力的な場合が多々あります。

 しかし、自分が従業員として働くことは考えられません。

 得てして、現場にほとんど裁量が与えられないからです。要は何事も「社長にお伺いを立ててみます」となるのです。

 学生時代、そういう出版社で編集アルバイトをしていたことがあります。社長の苗字で「○○書店」となっているところです。

 社員はいつも、社長の言動に戦線各々としていて、二言目には「社長が…」となっていました。外のお客さんと打ち合わせをするときも、「社長と相談して…」「社長に聞かないと…」となり、何だか気の毒でした。

 思うに組織で働く上でも、"決断する"ということは立派なスキルです。実務家として、その能力を磨く機会を与えられないのは、不幸としかいいようがありません。

 上司によく「自分で考えろ」と注意されるビジネスパーソンは、おそらく恵まれた環境にあります。

 逆によく、「自分で考えるな」とか「自分勝手に判断するな」と注意される人は、自身の能力不足故にそう言われるのか、そういう経営体制なのかを、キチンと見極める必要があります。もし後者なら、転職も視野に入れた方がいいかもしれません。

 "カリスマ経営者"がいる企業は、えてして従業員が自主的に働くことを好みません。経営者の忠実な手となり足となることが求められているのです。

 だからこそ、意志決定が迅速で、組織としての機動性を確保できる。これはこれはいい。実際、投資対象としては魅力的です。

 しかし、従業員にはなりたくありません。「社員がそれぞれ実務家として成長できるか」といった"個別の物語"への配慮は、やはり欲しいものです。

 思うに、実務家として腕を磨くことができるのは、経営者の影が薄い会社です。本来、マネジメントがしっかりした会社に、"カリスマ経営者"は必要ありません。

 実際、日本でもメディア露出度の高い経営者は、どこか胡散臭かったり、実際に逮捕されたりします。堅実な企業の経営者が、バラエティ番組に出演するとは思えません。

 若気の至りで、カリスマ経営者に憧れることはあるかもしれません。

 それなら、その企業に投資をすればいいことで、おそらく入社して働く必要はそれほどないのです。

 追記. ただし、安定志向が強い人には、"カリスマ経営者"がいる企業の方が居心地がいいような気がします。

山田宏哉記
 
 2010.1.9
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