ジョン・スミスへの手紙
 サイバー・ラボ・ノート (2459)

 入院患者のデジタルデバイド

 実質的な需要がほとんど見込めない話題ですが、入院患者のあいだには驚くべき情報格差が存在します。

 大部屋の各人のスペースには東芝製の20インチ程度のTVが備え付けられています。ちなみにこのTVは有料で\1,000の「TVカード」なるものを購入して差し込むと、初めて電源がつくという具合です。

 正確に測ったわけではありませんが、1時間\100くらいのイメージです。

 "暇な入院患者"(というのも変な表現ですが)は、他にすることがないので、それこそ「おもしろい番組をやっていない」などと愚痴をこぼしながら、1日中TVを見て過ごすことになります。

 他の楽しみと言えば、せいぜい食事くらいです。

 どうしても、"堕落"という言葉が頭をよぎります。治療の時間以外は、1日中TVを見て、3度の食事を楽しみにする。自分にはそんな生活は耐えられない、と思います。

 僕がやったことはPCをはじめとする各種のデジタル機器を持ち込んだだけです。そして自ら、情報空間を確保した。

 たったそれだけのことで、入院中といえども、情報の入出力が相当に確保できます。

 そして、たったそれだけのことをできない人は、1日中、TVを見続けるしかないのです。

 この差は大きい。いまや、ウェブに接続できていれば、物理的にはどのような空間にいようと、社会的な存在としてあり続けることができます。

 極端な話、文筆劇場の読者にとっては、僕の物理的身体が元気に会社勤めをしていようと、入院してへたばっていようと、ウェブが正常に更新される限りにおいては、別にどちらでも構わないでしょう。

 従来は、入院などといったら、もう現実からの後退戦以外の何者でもありませんでした。もちろん、今でも大方はそうです。

 しかし、情報革命によって病院という場所からであっても、一定のリテラシーさえ持っていれば、世の中とダイレクトに対峙できるようになりました。

 この変化は大きい。そして僕は、この変化に大いに感謝したいと思います。

   追記.「しっかりと休息を取る」という入院本来の目的は、この際、脇に置いておきます。

山田宏哉記
 
 2010.2.23
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