ジョン・スミスへの手紙
 サイバー・ラボ・ノート (2475)

 退場する"TV老人"

 既に何度か書いていますが、同室の"TV老人"のマナーが悪くて困っていました。

 昨夜は、深夜の病室で携帯電話の通話を始め、大変に迷惑をしました。病室で通話をすること自体が禁止されているのですが、よりによってみんなが寝静まった深夜の時間帯に通話をするのですから、完全に一般常識から外れています。

 そのTV老人がめでたく退場することになりました。一般的な用語では"退院"とも呼びます。

 もちろん、めでたい理由は、TV老人が「退院したから」ではなく、「部屋からいなくなったから」です。

 僕は密かに、あまりにTV老人のマナーが悪いので、実質的に病院側が"追放処分"にしたのだと睨んでいます。その証拠に、TV老人と看護師のあいだで、特に病状が改善したというような話はありませんでした。

 しかし、一般常識を読むことができないTV老人本人は、まさか自分が追放処分を受けたとは夢にも思わなかったでしょう。そして、自宅でも1日中TVを見ながら、朽ち果てていくのでしょう。  

 日本社会の怖い一面は、決して直接的に「あなたはマナーが悪いので、強制退院処分とさせていただきます」などとは言われないことです。お茶を濁して、「もう、退院しても大丈夫です」というようにオブラートに包んだ疎外を行います。

 そして、善悪を別として、日本社会を生きる上では、"オブラートに包んだ疎外"に敏感であることが、結構、重要です。

 結局のところ、"TV老人"が適切な治療を受けられたかどうかは、確認のしようがありません。

 ただ、病院のような場所でマナーの悪い振る舞いをしていると、まともな治療を受けることなく、体よく「めでたく退院」になり、「この世からも退場」するリスクがあることは、覚えておいて損はないと思います。

追記.めでたし、めでたし。

山田宏哉記
 
 2010.3.4
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