ジョン・スミスへの手紙
 サイバー・ラボ・ノート (2512)

 大人のための学習戦略

 一口に「大人」と言っても、学生と社会人(実務家を想定する)では、勉強・学習に対する心構えが変わってきて当然です。

 まず勉強に投資することができる時間が全然違います。学生には時間がある。社会人になってみればわかりますが、これは本当に貴重なことです。

 英単語や年号や格言の暗記などは、細切れの時間を使っても行うことができます。言い換えれば、社会人にもできます。学生はまとまった時間を投資しなければ身に付かないものに時間を使うべきだと思います。

 狭義の学問の世界で言えば、基礎や理論の習得、あるいは古典作品に親しむことを優先した方がいいと思います。

 僕は、学生が経営学の勉強に専念することは、正直、効率が悪いと考えています。なぜなら、「リアルではない」からです。ほとんどの学生にとって、例えばドラッカーの書物を読んでも、得られるものはあまり多くはないでしょう。

 それよりは、経済学や統計学の数字の扱い方に習熟した方が、社会人になってからも役に立つと思います。

 学生であればこそ、長期的なスパンで物事を考えるということも重要です。政治報道を毎日追いかけるくらいならば、マキャベリの『君主論』あたりを読む方がはるかに役に立ちます。

 社会人は、今日明日のこと、せいぜい1週間くらい先のことまでしか考えられない人が多い。仕事のプレッシャーというのはそういうものです。

 文化に触れるにしても、映画ならなるべく評価の定まった20世紀中盤くらいの作品から観ていった方がいいと思います。

 時間の篩にかけられても残る作品は、それなりの意味と価値を持っています。

 要するに、「リアルタイムの情報ノイズに振り回されるな」と言うことです。もしあなたが本物を志向する学生であるなら、最新の映画や演劇や音楽を追いかけていては、必ず後悔することになるでしょう。それらは所詮、表面的なものです。

 ITの世界でもそうですが、基礎的な部分はそれほど変わっておらず、身につけるためには時間をかけた体系的な学習が必要です。また、それは社会人には、なかなか真似のできないことなのです。

 社会人は、民間企業に勤めていれば、意識的な努力をしないと、新書レベルの書籍もまともに読むことができないでしょう。

 僕自身、学業に専念していたときより、明らかに読む本の量も知的水準も下がっています。残念ながら、これを認めないわけにはいきません。

 仕事を終えた後には、疲れて堅い内容の本はなかなか読む気にならないし、読んでも吸収効率が悪いのです。

 それでも仮に僕があまり馬鹿に見えないとしたら、それは実務経験によって実戦的な知識や技術を習得しているからだと言えます。タイピングのスピードが速かったり、エクセルを使って大量のデータを処理できたりと、そういう技術の効用は、案外あるのです。

 社会人全般に言えることですが、実務経験を通して学ぶことができるのは、学生には真似のできない強みです。「現場・現実を知っている」ということです。

 ただし、学生であれ、社会人であれ、学習戦略に関して共通して言えることがあります。それは「情報技術を徹底活用することの大切さ」についてです。

 従って、この分野に関しては、最新情報をフォローするが重要です。

 同様に、脳研究や人間の認知機能などの研究成果もなるべくリアルタイムでフォローしておくことが望ましい。これの辺りの分野は、理系・文系等の専攻分野に関わりなく、万人にとって必須の教養です。

 具体的には、大学の講義をICレコーダーで録音して聴き直したり、ウェブで公開されているMITの講義を視聴したり、といったことはどんどんするべきです。

 読むべき本があるなら、すぐにネットで図書館にかけたり、アマゾンで購入したりすることです。そういう点では、僕たちは前世代の人間よりも這うかに恵まれた立場にあります。

 タイピングの速度が遅いと感じるなら、タッチタイピングの技術をマスターしておくことも重要です。物理的に指を動かすスピードの格差というのは、案外、馬鹿になりません。

 新しいノートPCが必要だと感じたら、すぐに購入した方がいい。借金してでも買うべきです。

 何より貴重なのは時間であって、お金ではありません。

追記.以上、大まかに大人のための学習戦略を記してみました。何かの参考になれば、これ幸い。

山田宏哉記
 
 2010.3.27
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