ジョン・スミスへの手紙
 サイバー・ラボ・ノート (2523)

 予言されていたトヨタ問題/『トヨタの闇』

   渡邊正裕・林克明(著)『トヨタの闇』(ビジネス社)を読了しました。

 初めに断っておくと、副題が「利益2兆円の犠牲になる人々」となっていることからもわかるように、反トヨタのスタンスで一貫しています。従って、公平でもバランスが取れているわけでもありません。

 それでも尚、本書は読む価値があります。なぜなら、マスメディアが決して報じない事柄を取材して書いているからです。

 退職した元社員への取材により、トヨタの営業秘密と思われる記載も数多く見られます。

 上司は部下のメールを閲覧可能だったり、ウェブに接続する場合、ヤフーにアクセスするにも5分毎に閲覧規制がかかる等、かなり厳しい方ではないでしょうか。

 本書を読んで感じるのは、トヨタは、良くも悪くも昭和的な体質の日本企業だということです。従って、半強制的なインフォーマル活動(駅伝等の社内行事や組合活動)が重視されます。

 それでも、誰でも40歳を過ぎる頃には年収1,000万円に達するというのは、それなりに魅力的ではないでしょうか。安定志向の人にとっては、非常に恵まれた環境だと言えるでしょう。

 さて本書は、2007年の出版時点で、既にトヨタがリコール問題の深刻さを主張しています。

 例えば、著者たちが入手した国土交通省の内部資料によると、トヨタは2001〜2005年の5年間で、529万台のリコールを出しています。

 また、トヨタが海外では色々と労働トラブルを抱えていて、2007年には「反トヨタ世界キャンペーン」なるものが世界数十カ国で開かれたようです。

 問題は、ほとんどの日本人がこの種の情報を知らないことです。理由は簡単で、トヨタがマスメディアに支払っている広告出稿料が年間1,000億円に達するからです。本書によると、これは「口止め料」の別名です。

 トヨタは、広告主としてメディアに睨みをきかせることで、例えば秋葉原での無差別殺人事件の犯人が、トヨタ車を組み立てていたことなども、厳重に伏せられました。

 マスメディアは、こんにゃくゼリーで数人死者が出れば大騒ぎをしますが、自動車事故で年間6,000人の死者が出ていることは、全く問題にしません。

 トヨタ車のリコールの多さは、もともと問題でした。しかし、広告料が奏功して、ほとんど報道されなかった。

 従って、この度トヨタの北米での大規模リコール問題が大々的に報じられたのは、"品質管理"に問題があったのではなく、むしろ"報道管理"に問題があったのだと言えるでしょう。

追記.トヨタという企業に興味がある人は、読んで損はないと思います。

山田宏哉記
 
 2010.4.6
 記事一覧へ戻る 文筆劇場・トップ