ジョン・スミスへの手紙
 サイバー・ラボ・ノート (2534)

 なぜ、年配者は何でも口頭で済ますのか

   年配者はよく「最近の若者は、何でもメールで済ます」という類の小言を言います。

 確かに、そういう面はあるでしょう。若い人は、面と向かって謝罪すべき場面や、急を要する用件で「メールでしか連絡しない」というミスをしがちです。

 ただし、これらは既に問題として広く認識されているので、わざわざ僕が言うことではありません。

 問題は、むしろ年配者の方が抱えている「何でも口頭で済ます」という方にあります。

 例えば、取引先企業との取引を口頭だけで済ますと、記録が残りません。これだと、やりとりをした担当者が不在の場合、取引が中断することになりかねません。

 メールの往来や注文書をグループウェア等で共有していれば、誰と誰とどのようなやりとりをしているか、第三者にも容易に伝達することができます。

 組織運営上、「あの人にしかわからない」という状況は極力避けるべきです。これが、単純な情報共有上の不備によるものなら、尚更です。

 「自分ががいないと仕事が回らない」ことに満足感を感じるのは、理解はできますが、組織人としては望ましくありません。これでは、周囲が迷惑するだけです。

 むしろ組織で働く以上、「どうすれば自分がいなくても、仕事が回るようになるか」を考えるべきです。

 口頭で済ませた方がよいのは、緊急度が高いか、記録に残したくない案件に限った方が合理的です。共有した方がよい情報は、なるべく文字に起こして伝達した方が望ましいと言えます。

 僕自身、口頭で済ませたことで大きな失敗をしました。これまでで最悪だったのが、"内定の口約束"です。某出版社のワンマン社長にやられました。

 就活中なのに社長面接の後に「明日から、アルバイトとして来て」という無茶苦茶な申し出があり。週4で8:30〜18:00、3ヶ月働きました。それで、内定取り消しです。

 内定通知や労働契約を書面ベースで行っていれば、訴訟を起こして勝てたでしょう。

 しかし、こういう大事な局面を、口頭で済ませていると、結局「言った、言わない」で、うやむやになってしまいます。

 "欠勤連絡をメールでする若者"よりも、"口頭で内定を約束する"年配者の方が、よっぽど実害が大きい。

 したり顔で、「最近の若者は、対面での会話が苦手だから、何事もメールで済ます」と説く年配者には、「最近の年配者は、約束を破った証拠を残さないために、何でも口頭で済ます」と言い返したい。

追記.今では、僕の内定を取り消した出版社社員の平均年収の2倍は稼いでいると思うので、いい気味です。

山田宏哉記
 
 2010.4.14
 記事一覧へ戻る 文筆劇場・トップ