ジョン・スミスへの手紙
 サイバー・ラボ・ノート (2546)

 "バックナンバーの蓄積"という戦略

 強く言いたい。バックナンバーをウェブに蓄積して、アーカイブ化することの意味はとてつもなく大きい、と。

 大雑把に言うと、僕は約600〜800字くらいの記事(?)を2500本くらい自分のウェブサイトに掲載しています(2010年4月現在)。

 同時に、訪問者がどのコンテンツにアクセスしたかということも、解析しています。この作業を長らくやっていると、面白いことに気付きます。

 例えば、初めて僕のウェブサイトを訪問した人が、最新の記事を読んで、それなりに「おもしろい」と思ったとする(ちなみに僕は、訪問者の"滞在時間"で原稿の質や「どれだけ熱心に読まれているか」を判断しています)。

 すると、彼または彼女は、だんだん過去に遡って記事を読むようになる。

 大半のアクセスは、2009年以降に書いて掲載した文章に対してですが、案外、2008年以前に書いたものも読まれているようです。

 おそらく、時代そのものが「リアルタイムからバックナンバーへ」という方へ向かっています。

 言い方を変えれば、「リアルタイム性の追求では、他者と差別化できない」ということです。例えば、ある情報を他人より1時間速く知ったとしても、その差異から生まれる利益や優位性は、どんどん縮小しています。

 いまやリアルタイムでTV番組を見るのは、情報弱者の方です。毎朝、新聞を読むことの優位性すら、実は疑わしい。

 僕は必要に応じて、日経と日経産業新聞の記事をバックナンバーで検索して読んでいます。漫然と最新ニュースをいチェックするより、この方が遙かに役立ちます。

 紙ベースの雑誌の場合、「バックナンバーが読みたい」と思っても、出版社に「在庫がもうない」ということが結構あります。

 従って、マスコミ関係者等が、職務上の都合で過去の雑誌を参照する必要がある時は、国会図書館や大宅文庫に行って、コピーを取ることになります。下手をすると、これだけで半日〜1日仕事です。

 雑誌のバックナンバーは電子化してとして蓄積しておけば、こういう問題は一気に解決します。例えば、日経BP社の雑誌は既にバックナンバーがPDFで読めます。

 尚、個人で"バックナンバーの蓄積"という戦略をとる場合、いくらか内容面と技術面の課題があります。

 内容面では、意識的に「ある程度、時間が経っても読むに耐える」ものを蓄積した方がいいという点です。

 1日〜1年くらいタイムスパンの"未来予測"は、リアルタイムでないと、あまり情報価値がありません。2005年に書いた「きっと明日は雨でしょう」という天気予報は、今となっては全く意味がありません。

 技術的には、ブログサービスでは保管場所として地盤が脆弱だという点があります。

 例えば、より自分に合った仕様のブログサービスを利用するため、"ブログ移転"を繰り返す場合があります。

 そんな時、他人事ながら心配になるのは「今まで書いてきた記事はどうするの?」ということです。

 移転先のブログにこれまでの記事を逐一、投稿し直すのでしょうか。それとも、「移転しました」と告知だけして、後は放置するのか。最悪、サービス停止で過去の記事の一括削除という可能性もあります。

 いずれの選択にせよ、ブログという媒体では、バックナンバーの蓄積が大きな価値を生む時代のニーズに、適応しきれていないように思います。

 何はともあれ、情報空間でサバイヴするためには、目的地を"リアルタイム性の高さ"から"バックナンバーの蓄積"に切り替えた方が得策だと僕は思います。

追記.この原稿の掲載もツイッターで告知するあたりが、人間、なかなか理屈通りにはいかないところです。

山田宏哉記
 
 2010.4.23
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