ジョン・スミスへの手紙
 サイバー・ラボ・ノート (2558)

 ハイテクで騒いで、ローテクで儲ける

 これほど情報技術が騒がれているのに、多くの人は毎日、スーツを着て、満員電車に乗って、会社勤めをして、生活費を稼いでいます。

 自宅にIT機器を取り揃えて、"フリー・エージェント"を名乗って生活しているような人は、決して多数派ではありません。そんな人が、隣の部屋に住んでいたら、ちょっと不気味ですらあります。

 確かに、情報技術は素晴らしい。でも、それをビジネスにして、生活費を得ようと思ったら、大変な困難が待ち構えています。

 集金と決済のシステムこそ、ビジネスモデルの肝です。

 収益モデルが確立しているのは、得てしてローテクに属する分野であり、大抵、それは大企業がインフラを握っています。

 例えば、新聞社が、全国に販売店をおき、毎日、輪転機を回して新聞を刷り、新聞奨学生に配達させるというのは、どう考えても"古い"。環境にも優しいとはいえません。

 しかし、ビジネスモデルとして確立しているので、そう簡単に捨てるわけにはいかない。

 仮に日本の大手新聞社が、新聞を全面的に"電子版"に切り替えたら、収益の暴落は避けられないでしょう。

 個人に関しても同じです。

 現在、会社員として生計を立てている人が、「もう毎日通勤電車に乗る時代ではない。これからはアフィリエイトで生活する時代だ」と考えて会社を辞めたら、たぶん後悔することになるでしょう。

 学生の就職活動にしても、電力や鉄道のような地味なインフラ企業を狙う方が、ある意味で戦略的です。

 反面、ツイッターは素晴らしいウェブサービスだと思いますが、例えば、家族や友人が「ツイッター社に就職したい」と言い出したら、単純に勧めるわけにはいかないでしょう。

 合い言葉は、「ハイテクで騒いで、ローテクで儲ける」です。

 マスコミが「これからは○○の時代」と騒いで、みんながそれを忘れた頃からが、本当の勝負です。

 収入源に関して、個人が"革新的"になるのは、あまり望ましくありません。

 僕自身、平日はスーツを着て会社勤めをして、生活の糧を得ています。勤務時間中は、職務に専念し、あまり"過激な発言"はしません。

 普段、雑談で使うネタも、ウェブに書いても誰でも読んでもらえないような、当たり障りのないものが中心です。常識人に徹し、政治と宗教の話はしません。

 そのおかげで、東京都内でひとり暮らしができるのですから、ありがたいことです。

 何はともあれ、通勤電車に乗って会社勤めをして、毎月、給与がもらえるというのは、非常に恵まれた立場です。

 むしろ、そういう"ローテクな部分"を徹底的に活用くらいの思慮深さが必要でしょう。何しろ僕たちは、生身の人間でもあるのですから。

追記.以上、早稲田大学近辺の喫茶店シャトレーゼにて執筆&更新。

山田宏哉記
 
 2010.4.30
 記事一覧へ戻る 文筆劇場・トップ