ジョン・スミスへの手紙
 サイバー・ラボ・ノート (2563)

 暴走する情報中毒者

 まずは、以下の日経4/17付の夕刊の記事の引用文をお読み下さい。予め虫唾が走る事件だと断っていおきます。 

 愛知・豊川、家族5人刺され2人死亡、殺人未遂容疑、30歳長男を逮捕。

 17日午前2時20分ごろ、愛知県豊川市伊奈町前山の会社員、岩瀬一美さん(58)方の近所の住人から「女性が包丁で刺された。ほかに4人刺されている」と110番通報があった。県警豊川署員が駆け付けたところ、岩瀬さん方で家族5人が刃物で刺されているのを発見。

 岩瀬さんと孫の金丸友美ちゃん(1)が死亡した。同署は現場近くにいた岩瀬さんの長男で無職、高之容疑者(30)を殺人未遂容疑で現行犯逮捕、容疑を殺人に切り替えて詳しい状況を調べている。(略)

 同署によると、高之容疑者は「インターネットの契約を解除されたことに腹が立ち、包丁で家族を刺して、家に火を付けた」と容疑を認めているという。

 高之容疑者は犯行直前に正子さんとインターネットの契約を巡って口論となり、台所にあった包丁で家族を次々と刺したという。さらに、自分の部屋の布団にライターで火を付け、木造2階建ての2階部分を半焼させた。(「日本経済新聞」 2010/04/17夕刊)



 いやはや、世の中には全く救いがない事件があるものです。殺された父親は、さぞ無念だったことでしょう。定年退職間近の時期に、こんな引きこもりのバカ息子に家族もろとも殺傷されるとは。

 なぜ、このような事件が起きたのか。「犯人の精神病理」のせいにすれば、一応は片付きます。

 ただし、この凶行は"情報中毒者の禁断症状だ"というのが、僕の見方です。この事件は情報空間から切断された際の禁断症状が、顕著に現れた例です。

 実のところ、何年も1日中部屋にこもってインターネットをしているような人は、中毒者です。麻薬中毒者やアルコール中毒者と同様に危険人物として扱うべきなのです。

 情報というのは、こちらが発信し、相手からフィードバックがあり、またこちらが発信し…という具合にループ構造になっています。

 僕の情報活動を例に挙げれば、「文章を書く→ウェブを更新→ツイッターで告知→訪問者がアクセス→アクセス解析→新しい文章を書く→ウェブ更新…」という具合です。この循環が断ち切られると、僕はイライラしたり、そわそわすることになります。

 一種の禁断症状です。これを認めないわけにはいきません。

 例を変えましょう。あなたがメールを書いて送信し、相手からの返信を待っている。その間、何だか「そわそわ」しないでしょうか。そういうこと、あるのではないでしょうか。

 これは"情報の禁断症状"に他なりません。特に携帯で「問い合わせ」を連発している人はそうじゃないかなぁ。

 そして、相手からの返信が届くと「ほっと一安心」する。よく考えると、これはアルコール中毒者がアルコールを与えられて、「ほっと一安心」するのと同じなのです。

 普通は、インターネットの契約を解除されたくらいで、人を殺したりはしないでしょう。しかし、僕でもウェブに完全にアクセスできなくなったら、相当なフラストレーションになることは間違いありません。

 特に、引きこもりのような特殊な環境に置かれ、インターネットが"唯一の社会との接点"だった人にとっては尚更です。"禁断症状"が暴走することがあるように思えます。

 全く救いのない事件だからこそ、僕たちがこの事件から何かを学ぶことが大切なように思います。

追記.秋葉原の無差別連続殺人の動機も「情報中毒者の禁断症状」という点から解けないものか考えているのですが、ちょっと無理があるかな。

山田宏哉記
 
 2010.5.4
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