ジョン・スミスへの手紙
 サイバー・ラボ・ノート (2567)

 毎年100万人の交通事故負傷者数は"許容範囲"なのか

 まず、覚えておきたい数字があります。

 ここ20年くらいを平均すると日本では毎年80万件の交通事故が発生し、約100万人が負傷し、約1万人が死亡しています。

 この件については、警視庁交通局がデータを公表しています。

 http://www.npa.go.jp/toukei/koutuu45/20090107_1.pdf

 総務省データでも2008年は事故件数80万件、死者5,000人となっていて、警視庁のデータと整合性はとれています。

 http://www.stat.go.jp/data/nihon/g6126.htm

 こうしてみると、交通事故は最近、減少傾向にはあるそうです。それでもまだまだ多い。

 警視庁の基準では、自動車に轢かれても24時間以内に死ななければ、交通事故による死亡者としてカウントされていません。ですので、事故が原因で死亡した人は、この数値よりも多く見積もる必要があります。

 交通事故で、毎年1万人の日本人が死んできたのです。少なくとも、背中に矢が刺さったカモとか、多摩川に現れたアザラシよりは、報道価値があるのではないでしょうか。

 なぜ、自動車事故による死傷者数は、大きなニュースや社会問題にならないのでしょうか。

 それとも、約100万人が交通事故で負傷していることは、大したことではなく、あくまで"許容範囲"なのでしょうか。では、検証してみましょう。

 計算上の都合で、日本国民が交通事故に遭う確率を1%/年と仮定します。

 まず、自分が交通事故(1%/年)に遭わずに暮らせる確率は、10年間で90%(0.99の10乗,excelで計算するには=power(0.99,10))。20年間で82%、30年間で74%となります。これなら、直感的に許容範囲とも思えます。

 しかし、家族4人("典型的核家族"を想定)が誰も交通事故(1%/年)に遭わない確率はどうでしょうか。計算すると、10年間で67%(0.9の4乗)、20年間で45%、30年間で30%となっています。

 これは驚くべき数字です。計算上、半数くらいの日本人は「ここ20年で家族の誰かが交通事故に遭っている」わけです。実際、私自身も小学校時代に車に轢かれていますし、妹も轢き逃げされています。

 さらに、交通事故100件のうち、1件は"死に至る致命傷"だと仮定しましょう。

 自分が交通事故で死ぬ確率は、10年間で0.1%(1−0.9999の10乗)、20年で0.2%、30年で0.3%です。

 4人家族の誰かが交通事故で死ぬ確率は、10年で0.4%、20年で0.8%、30年で1.2%となります。

 知人友人が20人だと仮定すれば、誰かが交通事故で死ぬ確率は、10年間で8%(1−0.996の20乗)、20年で15%、30年で21%となります。

 人口1億2000万人の日本で、毎年80万件の交通事故が発生し、100万人が負傷し、毎年1万人の死亡者を出してきたのは、明らかに"許容範囲"を超えています。

 なぜ、交通事故負傷者数は社会問題として提起されないのか。

 僕たちはもっと「我々が便利な自動車社会を享受するために、交通事故で毎年100万人が負傷し、毎年5,000人が24時間以内に死んでいる」という構造を直視するべきでしょう。

 そしてみなさん、なるべく自転車に乗りませう。

追記.当初、ツイッターで総務省のグラフを読み間違えて2008年の交通事故死者数を約8,000人(正しくは約5,000人)と誤報しました。指摘を受けて判明しました。訂正してお詫び致します。

山田宏哉記
 
 2010.5.7
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