ジョン・スミスへの手紙
 サイバー・ラボ・ノート (2603)

 2010年の歌舞伎町 演出された危険と喧騒

 2010年6月11〜12日、新宿歌舞伎町を探訪してきた。

 私事になるが、2008年まではほぼ毎日、新宿の歌舞伎町に足を運んでいた。高田馬場で月\39,000を下宿を借り、新宿伊勢丹の清掃アルバイトをして、生活費を稼いでいた。

 自室に風呂が付いていなかったため、歌舞伎町のハイジアビルに入っている東急スポーツオアシスの会員となり、そこでシャワーを浴びていた。

 部屋にインターネット回線を引くことすらできなかったので、ウェブの更新は、もっぱら、歌舞伎町のネットカフェで行っていた。

 10分¥40や10分¥50といった歌舞伎町特有の料金体系のネットカフェで、速攻で原稿を書き、アップロードしていた(2007年以前の文筆劇場のコンテンツは、大学のPCルームか、歌舞伎町のネットカフェで書いたものである)。

 僕は、歌舞伎町のような空間がどちらかと言えば好きだった。
 欲望が渦巻き、一歩間違えば地獄に落ちるようなスリルが、若さ故の傲慢とフィットした。

 2008年4月から社会人を始めて以来、歌舞伎町からは足が遠ざかっていた。どこかで「歌舞伎町的なもの」は、封印するべきだと感じていたのだろう。

 そして2年が経った。僕の生活は変わった。きっと歌舞伎町も変わっていることだろう。巷では歌舞伎町が「健全」になったという話も聞く。

 僕は自分の眼で、「歌舞伎町の現在」を確かめることにした。以下はその記録である。

【資料1】歌舞伎町・ネオンの看板消費者金融のものが最も目立っている。


 ネオン看板の第一印象は、「消費者金融のものが多くった」ということ。具体的には、武富士、プロミス、アコムなどである。

 ただし、2年前は看板を風景として見過ごしていたため、客観的には変わっていないのかもしれない。「何気ない日常」も正確に記録しておかなければ、忘却の彼方へ消えてしまうのだ。

【資料2】歌舞伎町の街並み。いかがわしい店、いかがわしい人々。



 客引きが鬱陶しいのは、以前から変わらぬ通り。男性の客引きからは「居酒屋」「ガールズバー」「キャバクラ」「AV嬢のヘルス」などの声かけ。外人女性からは「マッサージいかがですか?」。

 なかでも、「ガールズバー」が台頭しているようだ。 その種の店舗をいくらか見かけた。

【資料3】閉館した新宿コマ劇場今も歌舞伎町の守護神的存在。



 コマ劇場に一度も入場したことがないのと、営業中のコマ劇場の写真を一枚も撮っていなかったことが、今となっては悔やまれる。

【資料4】ハイジアビルとその前のラブホテル。


 ハイジアビルの5〜7階に「東急スポーツオアシス」が入っている。数年前、ハイジア直下のラブホテル前にて、娼婦や援交少女が客引きをしていた。そのため、路上で立ち止まりにくいように「整備」された。

【資料5】漫画喫茶の看板。マンボーの看板は限りなく詐欺に近い。


 10分\40という衝撃的な料金体系のネットカフェ「まんが王国」。今も健在。学生時代、最もお世話になったネットカフェのひとつだった。

 残念ながら、10分¥50のネットカフェはなくなってしまったようだ。

 対照的に、マンボーの看板は悪意に満ちている。この看板を見て、「男性は300円」という表示に気付く人がどれだけいるだろうか。明らかに「客を騙そう」という意図が透けて見える。

【資料6】風林会館1階の「パリジェンヌ」ヤクザ御用達の飲食店。


 歌舞伎町風林会館近辺は、ヤクザ事務所とヤクザの密集地帯となっており、防犯カメラが張り巡らされている(ようだ)。

 風林会館の1階にあるのがカフェレストランのパリジェンヌ。2002年に中国人マフィアが日本のヤクザを殺害した際は、現場になった。

 「特上弁当」\2,200を注文。味は悪くない。向かいの4人組は、会話の内容がどう聞いてもヤクザだった。

【資料7】「パリジェンヌ」の「特上弁当」。\2,200。


【資料8】歌舞伎町交番日本で最も忙しいと思われる交番のひとつ。


 極めて主観的な記述になるが、今回探訪してみて、歌舞伎町が、あまり怖くなくなった。確かに、一般社会とは隔絶している感はある。

 それでも、現在の新宿・歌舞伎町には、つい"演出された危険"というものが感じられてしまった。以前と比較すると、アウトローな雰囲気、アンダーグラウンドな香りを"セールスポイント"にしている感が否めない。

 今回の探訪とその記録に、どれだけの価値があるのかは、まだわからない。なぜならこれらは、「当たり前の日常」に過ぎないからだ。

 ただし、この光景が「当たり前」ではなくなる日は、必ずやってくる。言い換えれば、本リポートの目的は「未来から遡及された現在」を描くことに他ならない。

山田宏哉記
 
 2010.6.13
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