ジョン・スミスへの手紙
 サイバー・ラボ・ノート (2619)

 "ネットカフェ条例"を徹底批判する

 知る人は少ないだろうが、2010年7月1日から東京都では「ネットカフェ条例」なるものが施行された。

 既存のマスメディアはほとんど報じていないが、「朝日新聞」2010年06月28日の「東京西部・1地方」で、辛うじて関連情報が報道されていた。

【引用開始】

 ネットカフェ利用、本人確認「協力を」 AKBメンバーら呼びかけ 秋葉原 /東京都

 インターネットカフェ利用者の本人確認を義務づける都の「ネットカフェ条例」が7月1日に施行されるのを前に秋葉原で27日、人気アイドルグループ「AKB48」のメンバーと警視庁の山下史雄・生活安全部長らが、犯罪のないインターネットカフェの実現を呼びかけた。

 条例は、店側が利用者に運転免許証や健康保険証などの提示を求め、客側も正しい身分証明書を提示することを義務づける。違反した場合は店と客の双方に罰則がある。

 都内にある500余りの店舗が対象となる。山下部長は「インターネットカフェは身近で気軽に利用できる半面、犯罪が後を絶たない」と、本人確認への協力を求めた。

(「朝日新聞」2010年06月28日 「東京西部・1地方」)

【引用終了】

 この記事は「東京西部」に住んでいる人か、朝日新聞のバックナンバー記事検索を契約している人しか読むことができない。要するにごく一部の人しか読んでいない。

 リベラルを自認する「朝日新聞」において、「ネットカフェ条例」のような大問題がこのような小さな扱いというのは、一体どういうことだろう。しかも、記事の見出しが完全な警察目線で泣けてくる。

 私も昨夜、毎週恒例の「ネットカフェでの雑誌まとめ読み」のため、大森コミックバスターに行ったとき、身分証の確認を求められ、健康保険証を提示した。確認した証拠として会員カードに穴を空けられた。

 ネットカフェのよさは、ウェブに接続できないときに、気軽に立ち寄れる点にある。その度に身分証を提示して会員証を作るのは不便極まりない。

 利便性の問題以上に重要なのは、思想的な問題である。「犯罪防止」を口実にすれば、どのような規制・管理も可能になってしまう。これは極めて危険なことだ。

 「犯罪防止」のためにできることは色々ある。まず、定職を持たない人間が外出する際は、身分証の携帯を義務付けるべきだろう。浮浪者や野宿者は収容施設に隔離するべきだ。

 さらには「犯罪防止」のために、国民は毎週、警察に出頭し、違法行為を犯していないことを証明する義務を負うべきだろう。万引きや飲酒運転であっても、死刑にするべきだろう。重犯罪の場合は、連帯責任で親族全員を処刑するべきだろう。

 極論を言えば、国家権力は犯罪を「予防」してはならない。事後的に犯罪者を処罰してよいだけである。

 私は「犯罪防止のためにネットカフェでの身分証提示義務」を暴政だとアジェンダ提起し、徹底批判する。これは時事的には小さな問題だが、思想的には恐怖政治への第一歩である。

山田宏哉記
 
 2010.7.2
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