ジョン・スミスへの手紙
 サイバー・ラボ・ノート (2624)

"読みやすさ"を超えた読書端末論

 紙に印字された書物の方が、液晶モニタを通して読む電子書籍よりも読みやすい。このことに異議を唱える人はいない。

 紙媒体で行われる紙の書籍と電子書籍の比較は、大抵、この点を強調することに終始しているが、この程度の認識では時代から取り残されることは確実だろう。

 知的生産に活かす素材としての本を考えたとき、"読みやすさ"というのは、あくまで魅力のひとつである。"読みやすさ"という基準だけで紙の書籍と電子書籍を比較するのは公平ではない。

 電子書籍の強みは、何といってもその補完性と携帯性にある。紙の書物をPDF化して、オンラインストレージに"電子書棚"を構築すれば、モバイル端末から場所を問わずにアクセス可能になる。

 " 電子書棚" にこれくらいのストックがあると、「時間と場所を問わず書籍にアクセスできる」というメリットが「液晶モニターでは読みにくい」というデメリットを上回るようになる。

 必要な書物は原則、電子化するようにすれば、例えばレポートを書く際、「参考文献が手元にないため、筆が進まない」ということがなくなる。また、大量の本を持ち歩く必要もなくなる。これは"紙の読みやすさ"よりも遥かに重要ではないか。

 また、電子書籍が物理空間のスペースを取らない点も特筆するべきだ。僕は案外、書籍が売れなくなった主要な原因は、日本の住宅事情にあるように思う。

 僕はこれまで、本は買って読むより、図書館で借りて読む方が多かった。公共図書館と大学図書館を利用していた。

 理由はお金をケチっているというより、部屋の収納スペースの問題だ。読み終わった本は積み上がる一方で、これでは生活空間を圧迫してしまう。

 また、普通の生活をしている人にとっては、蔵書を何千、何万冊持つという贅沢は許されないだろう。

 僕は今、紙の本をScanSnapでpdf化してDropboxに入れている。30冊くらいのストックで、場所を問わずiPhoneから「電子書棚」にアクセスすることが可能になった。

 既存の紙の書籍の電子化を始めてから、僕は本を買う方向にシフトした。特にブックオフの100円コーナーは宝の山なので、既に買い占めモードに入っている。

 そしてひとつ言えるのは、今度、電子書棚へのストックが増えるにつれて、いよいよ電子書籍の優位性が決定的になるだろう。もう、"読みやすさ"だけで紙の書籍の優位性を唱えることはできない。

 今こそ、単なる"読みやすさ"を超えた総合的な読書端末論が必要なのだ。


山田宏哉記
 
 2010.7.6
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