ジョン・スミスへの手紙
 サイバー・ラボ・ノート (2651)

 "実世界の書店"のあり方に思う

「今日中に必要な本」があって、丸善丸の内本店に行ってきました。あまり多くはありませんが、Amazonで発注していたのでは間に合わない場合、大型書店は重宝します。

 それでも、"実世界の書店"のあり方について、思うところが多々ありました。

 丸善丸の内本店は、物理空間にある書店としては、目当ての本が探しやすいとは思います。店内のタッチパネルで目当ての本のタイトルを検索すると、置いてある棚の位置が表示されるようなシステムが導入されています。

 「"物理空間の書店"であること」という限界は強く感じました。つまり、Amazonの利便性とは全く比較になりません。

 実世界の書店に目当ての本がない場合の「取り寄せサービス」はさらに絶望的な状況になっています。取り寄せに1週間以上かかり、再度来店する必要という非効率。これでは完全にAmazonで買物が出来ない人向けのサービスでしかありません。

 もう、実世界の書店は「目当ての本」を買いに行く場所ではなくなっています。おそらく、実世界の書店もこのことに自覚的になる必要があります。

 新刊本であれば、大型書店に行けば、大抵のものは手に入りますが、数年前の書籍となると、もうAmazonの品揃えに太刀打ちできなくなります。

 ひたすら書店のフロア面積を拡大して品揃えの拡充を図る戦略は、一定の有効性が認められるものの、所詮は負けが約束された戦いです。

 実世界の書店がAmazonに対抗するためには、「空間」や「雰囲気」、あるいは品揃えの「コンセプト」を売りにするしかないと思います。

 本棚の背表紙を眺めるのも重要な読書の一部です。行く度にちょっとした発見があるなら、実世界の書店には充分な存在意義があります。あるいは、カフェを併設してコーヒーを飲みながら買った本を読めるようにする、などの工夫も有効でしょう。

 それでも、新宿の有名書店でアルバイトをしていた経験(あまりのストレスで2週間で辞めた)から言わせてもらうと、本を売るために書店にできることは、あまりに限られています。

 最低限、書店の側で自由に本の価格決定ができるようにしないと、実世界の書店に明るい将来はなかなか期待できないでしょう。

 山田宏哉記
 
 2010.8.2
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