ジョン・スミスへの手紙
 サイバー・ラボ・ノート (2664)

 夢の記録―自転車事故

 僕は、自転車で空を飛べることに気が付いて遊んでいた。

 偶然、通りがかりの女の子から、耳寄りな情報が寄せられた。「学校の隣に"秘密の核施設"がある」。学校は山を切り崩したような場所に立っていて、その隣には林が生い茂っていた。

 地上からはアクセスできないが、空からならばアクセス可能だ。

 僕は、自転車のペダルを一生懸命に漕いで、浮き上がった。撮影にはiPhoneを使う。何枚か"秘密の核施設"の写真を撮影するが、なかなか決定的な一枚が撮れない。

 僕は助走あるいは滑走のあり方から考え直すことにした。

 気合いを入れて、坂道から滑走を始めたものの、今度はブレーキが効かなくなってしまった。飛び立つどころではない。何とか障害物を避けながら走っていたが、僕は、自転車で偶然居合わせた幼い子供を轢いてしまう。

 正確には、激しく衝突したわけではなく、自転車の「羽」が子供の脛と接触したというものだった。僕自身、自転車ごと道路脇の民家に突っ込むことで、ようやく止まった。

 起き上がると、列を作って歩く子供たちがいた。子供の列の一人が、泣いてお漏らしをしていて、他の子供からからかわれていた。

 僕が接触したのは、その子なのか。確証が持てなくて、黙っていた。できれば、そのまま子供たちが通り過ぎ、「何もなかったこと」にしたかった。

 そこに、そのクラスの担任と思しき女性がやってきて、一緒にその子をバカにした。

 女性の担任は泣く子をからかっているうちに、その子の歩き方がおかしいことに気付いた。先生は尋ねる「痛いの?」。子どもは答える「痛い」。

 女性の担任は子供を背負って、歩き始めた。このまま背負って、家まで送るつもりだろうか。

 女性の担任は不意に歩みを止めた。そして、押し殺したような声で言った。

 「この子を轢いたのは誰ですか?」  

 山田宏哉記



 2010.8.16
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