ジョン・スミスへの手紙
 サイバー・ラボ・ノート (2667)

 「非同期」志向のビジネス・コミュニケーション論

 ビジネス・コミュニケーションの基本は、「非同期」にするべきです。例えば、ホウレンソウで言えば、口頭でするべきは"相談"だけです。その理由を説明しましょう。

 大前提となるのは、「時間こそが何より貴重な資源である」という考え方です。

 「人間はいつか必ず死ぬ」ということは大抵の人が理解しているけど、「人間はいつ死ぬかわからない」という事を身体で理解している人は少ない。実生活を送る上で大切なのは断然、後者です。

 何気ない日常も奇跡のような偶然の上に成り立っています。平凡に見える生活であっても、過ぎ去れば取り戻せない一瞬です。時間はカネとは比較にならない程、かけがえのないものです。

 従って、リアルタイムで追う必要がない情報は、極力、自分の都合がいい時間に処理する方が合理的です。

 テレビ番組も新聞記事も、本来リアルタイムで追う必要はありません。時間が何より貴重な世界で、同期を迫る情報伝達手段はむしろ「失礼」と考えるべきです。

 例えば、ホウレンソウで言えば、口頭でするべきは相談だけです。「文字だけだと誤解を招く」という言葉は、「私には言語表現能力がありません」と告白するのと同義でしょう。

 「メールよりも電話。電話よりも対面のコミュニケーションの方が素晴らしい」というのは、あくまでコミュニケーションそのものが目的となっているとき(家族や友人との生活場面等)の話です。

 年配者はよく「最近の若者は、何でもメールで済ます」式の小言を言いますが、実際は"何でも口頭で済ます"年配者の方が問題が多いものです。口頭で済ますと、記録が残らないために、第三者と情報共有ができません。

 「隣の机の人にメールをする」ことを情報技術の弊害のように言うのは、全くナンセンスです。数値が多い連絡や1対Nコミュニケーションや記録性が求められる局面では、明らかにメールの方が適しています。

 「仕事を遂行するためにコミュニケーションがある」のであって、「コミュニケーションをとるために仕事がある」のではありません。仕事にとって、コミュニケーションは"コスト"です。少なくて済むなら、それに越したことはありません。

 だからこそ、ビジネス・コミュニケーションは、なるべく「非同期」にするべきなのです。以上の指摘がラディカルに聞こえること自体、残念ながら日本のホワイトカラーの労働生産性が低いことの証左のように思われます。

 山田宏哉記



 2010.8.19
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