ジョン・スミスへの手紙
 サイバー・ラボ・ノート (2679)

 NHKスペシャル「中東 砂漠の富の争奪戦」覚書

 NHKスペシャルで放送されている"灼熱アジア"シリーズの「中東 砂漠の富の争奪戦」(2010年8月29日放送)を視聴しました。少なくとも私にとっては、"既存の中東観"を覆す内容となっていたので、内容を紹介致します。

 中東のオイルマネーは200兆円規模だと言われています。率直に言えば、「産油国であることの上に胡坐をかいている」と思ってきました。

 しかし、アラブ首長国連邦、カタール、バーレーンなどは、いまや「石油依存からの脱却」を志向しています。そして、急速に市場を広げつつあるクリーン・エネルギー分野(3年後には50兆円市場になると予測されている)に肩入れしつつあります。

 このような取り組みの中心人物のひとりがマスダールCEOのスルタン・ジャベル氏(36歳)です。若手のエリートでアメリカでMBAを取得したとのことです。

 この番組の柱のひとつは、このジャベル氏の活動への密着取材です。

 スルタン・ジャベルは、UAE(アブダビ)の砂漠の真中に、環境未来都市である"マスダール・シティ"を建設中です。総事業費は2兆円にのぼります。

 さて、砂漠は太陽光発電に最適な環境です。サウジアラビアからサハラ砂漠にかけてのサンベルト地帯に降り注ぐ太陽光6時間分で、世界中の電力消費量の1年分を賄えるという試算もあるようです。

 "砂漠の富"とは、「地下資源」ではなく、「太陽光」なのです。中東がこのことに自覚的になったことの意味は大きい。

 カタール経済も、LNG(液化天然ガス)によって躍進が続いています。いまや、カタールの国民ひとりあたりのGDPは世界3位にのぼります。

 カタールでは現在、世界最大規模のLNGプラント建設が行われています。世界80ヶ国からやって来た約7万5,000人が働いているようです。

 このプラントの設計等を担当しているのが、日本の千代田化工建設です。千代田化工建設への密着取材が、この番組のもうひとつの大きな柱となっています。

 背景を説明すると、カタールは豊富なLNGを埋蔵しながら、政府が自力で採掘するのは困難でした。そのため千代田化工建設と共存共栄の関係にありました。

 しかし、ここに来て両者の力関係に変化があり、カタール側が優位になりつつあるとのことでした。

 番組では、千代田化工の社長が月に1度のカタール詣を欠かなかったり、新人がカタールで外国人に混じっての3ヶ月の現地研修に参加する場面が紹介されていました。

 そして、仮に今回の企画と取材の意図が「"新しい中東像"を提示する」ことにあるとすれば、その試みは成功したと思います。


 山田宏哉記



 2010.8.31
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