ジョン・スミスへの手紙
 サイバー・ラボ・ノート (2712)

 クローズアップ現代「検察 激震」覚書

 クローズアップ現代「検察 激震〜前特捜部長 逮捕の衝撃」(10月7日放送)を視聴しました。

 周知の通り、FDの改竄で、主任検事に続いて、当時の上司だった前特捜部長と副部長が逮捕されました。その検察内部の構造を検証した番組になっています。

 率直な感想を言うと、特捜部長と副部長の逮捕は「見せしめ」の意味合いが大きく、正直、「気の毒だなぁ」と思います。

 暴論かもしれませんが、義理を大切にするなら、主任検事は上司に相談するべきではなかった。相手に知らせてしまった以上、「共犯」として巻き込むことになります。

 人間関係を大切にするつもりなら、仲間に「違法案件の相談」をするべきではありません。仲間に「報告(通報)するか、黙っているか」の選択を迫ることになります。前者を選べば仲間を売ることになり、後者を選べば犯罪者になります。

 組織のために部下が罪を犯し、それを告白してきた場合、その部下を切ることができる上司は少ない。むしろ、ここで何の躊躇もなく部下を切るようでは、それは上に立つ者の器ではない。

 不正を働いた部下を庇ったことを理由にその上司を叩くのは、理屈としては正しくても、人として「やってはいけない」と僕は思います。

 では、主任検事はどうするべきだったのか。組織や上司を守ることができたのか。

 その方法がひとつだけありました。黙って自殺することです。

 もちろん、そんなことはしない方がいい。しかし、一昔前の人なら、自殺することで責任を取ったでしょう。

 システムの役目は、構造的に犠牲者を出さないようにすることです。

 さて、番組では主任検事が事件の構図を描き、特捜部長がその案件を決裁し、現場の検事が取り調べを行う、という仕事の流れが説明されていました。

 この業務フローそのものに大きな問題があります。

 何より問題なのは、取り調べよりも前に、ストーリーが作られ、「上」が一定の筋書きで決裁していることです。「上」が決裁した案件に逆らえる組織人は、滅多にいないでしょう。

 検事の個人的な"職業倫理"に期待するのは的外れです。組織人にとっては、職業倫理より人事権の方が遥かに重要だからです。彼らだって、家族がいたり、住宅ローンを抱えていたりするのです。

 むしろ、「上」が描いたストーリーに合う供述調書を取る検事が評価されて出世するなら、みんなそうするに決まっています。

 このようなシステムを変えない限り、次なる"犠牲者"が出ることは目に見えているでしょう。

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山田宏哉記



 2010.10.9
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