ジョン・スミスへの手紙
 サイバー・ラボ・ノート (2725)

 NHKスペシャル「チリ鉱山事故の真実」覚書

 NHKスペシャル「奇跡の生還〜スクープ チリ鉱山事故の真実」(10月24日放送)を視聴しました。

 非常に報道価値のある番組に仕上がっていました。何と言っても、閉じ込められていた方が撮影した「地下生活」の様子が収録されているのが決定的です。

 事故があったコピアポ鉱山は、200年前から掘られ続けていたで、深さは約700メートルになります。大規模な岩盤崩落が起きたのは地下400メートルの時点です。

 地上と連絡がついたのは事故発生から17日目になります。今回の33人全員救出は「薄皮一枚」で、特に生存確認までに要した日数が17日間というのは、かなりギリギリの線だったとわかります。

 その間、作業員たちが絶望感に打ちひしがれていた様子が証言されています。地下には食料の備蓄もほとんどなく、作業員は平均で10キロ体重を落としたようです。

 救出のためには、地下700メートルに向かって一本の真直ぐな穴を掘る必要がありましたが、途中で空洞(古い坑道)に当たると軌道がズレて不可でした。掘り始めて13本目の穴でようやく成功したようです。

 地上から掘られた細い穴が作業員たちのいる場所まで貫通すると、連絡や食料品などが地上から届けられるようになります。

 地上から物資が次々と届けられるようになると、結束していた作業員の間に諍(いさか)いが起きるようになりました。家族とのTV電話の時間の長さだったり、TVのチャンネル争いだったりです。

 当事者は「"欲"が生まれた」と証言していました。この辺りは非常に考えさせられる部分です。

 また、印象的だったのは、地上と連絡がついた後は、作業員たちが一日8時間を「働く時間」にあてていたことです。人間というのは極限的な状況にあっても、働きたいと思うものなのかもしれません。

 一方、リスクマネジメントや安全対策の視点から見ると、問題点は山積しています。特に螺旋状の一本道で地下に向かって伸びるという構造では、長く作業するほどどこかで崩落事故が起き、閉じ込められる可能性が高くなります。

 しかも、この鉱山では以前も崩落事故が起きていたにもかかわらず、補強が不十分なままで今回の事故が起きたようです。

 もっと言えば、200年前から掘り続けていて、古い坑道が網の目のようになっているという時点で、既に赤信号でしょう。ですので、今回の事故を単なる「美談」に仕立てるのは間違っています。

 以上のようなことを考えさせられる番組でした。

山田宏哉記

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 2010.10.26 記事一覧へ戻る 文筆劇場・トップ