ジョン・スミスへの手紙
 サイバー・ラボ・ノート (2726)

 クローズアップ現代「増殖する監視カメラ」覚書

 NHKクローズアップ現代「増殖する監視カメラ」(10月25日放送)を視聴しました。

 「監視カメラ」というのは、警察が嫌う言い方です。警察推奨は「防犯カメラ」です。

 監視カメラを含めた映像監視装置の市場規模(売上高)は、現在約2,000億円。1990年に500億円市でした規模、1999年に約1000億円規模、さらに2003年に2000億円規模になりました。1995年のオウム事件と2001年のアメリカでのいわゆる「同時多発テロ」の影響も読み取れます。

 番組では、監視カメラを巡って以下にようなトラブル事例が紹介されていました。

 トラブル事例(1)コンランドリーが予め空き状況を確認できるように監視カメラの映像をウェブで公開したところ、覗き見マニアたちのアクセスが殺到した。

 トラブル事例(2)イギリスにて。ゴミ箱に猫を捨てた女性の姿を飼い主の監視カメラがとらえていた。怒っ手たた飼い主はこの映像を動画投稿サイトに投稿し、猫を捨てた女性の個人情報が流出した。

 女性は誹謗中傷で鬱状態になり、退職に追い込まれることになった。後に明らかになった事情では、猫を捨てる数日前、父親が危篤となり、情緒不安定になっていた。

 特に後者は、決して誉められた行為ではありませんが、社会的生命を終わらせるほどの制裁を課す必要はありません。

 監視カメラの運用基準は明確に定められておらず、設置者の裁量に任されているのが現実のようです。しかし、これには大きな問題があります。

 出演していた西原博史氏(早大教授。私事になるが、学生時代、憲法の講義を受けた)も指摘されていましたが、「監視されたくない」という声はあげづらいという事情があります。

 監視カメラの設置に反対すると、「後ろめたいことをしているからだ」とか「犯罪を企てているからだ」と言われかねない。

 しかし、それは違うと僕は思います。

 例えば、ある店では、監視カメラで公道を撮影し、通行人のカウントや属性分析をするためのマーケティング・ツールとして使っているとします。これは許容範囲なのか。

 あるいは、ラブホテルの入り口に監視カメラをつけるのはどうか。設置に反対するお客さんが「後ろめたいことをしているからだ」と指弾されたら気の毒でしょう。

 結局のところ、監視カメラを設置する背景には、「相互不信」があることを見逃してはならないと思います。「体感治安の悪化」の主たる原因はこの「相互不信」にあります。

 隣人を「潜在的犯罪者」と見做すような街には住みたくないものです。僕たちが監視すべき対象は、隣人ではなく、監視カメラの方ではないでしょうか。

山田宏哉記

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 2010.10.26 記事一覧へ戻る 文筆劇場・トップ