ジョン・スミスへの手紙
 サイバー・ラボ・ノート (2727)

 今、"職場での学び"を考える

 仕事をするのに、時間と場所の制約が失われつつあります。そんなことを考える時、ふと思い出すことがあります。

 編集アルバイトをしていた頃、「電話の取り次ぎから得られる情報は多い」と教わったことがありました。

 これはまさにその通りで、電話番をするにも熱意があれば、得られるものは多いと気付かされました。

 特に出版社であれば、色々な電話がかかってきます。書店からの書籍の注文電話は非常に勉強になりました。ライターの方からの「早く原稿料を入金して下さい」という電話を受けたこともありました。

 時として、一本の電話が業界全体の問題を照射することもあります。

 だからこそ、僕は思う。新人のうちは、ワイワイガヤガヤとした職場で働く方が成長が早い、と。

 上司や先輩の言葉に何げなく聞き耳を立てたり、同僚が仕事をする様子を眺めたり、来客や電話の対応をすることで得られる知見は本当に多いものです。

 職場内訓練というのは、受ける側の資質如何によって、効果が全く違ってきます。上司や先輩から言葉で「覚えておけ」と言われたことしか覚えないタイプでは、将来は暗いでしょう。

 技能は基本的に「盗む」ものだという認識が必要だと思います。伝統的な芸事の師弟関係では、これが弟子に求められる資質です。当然、誰でも弟子になれるわけではありません。

 また、自分の仕事が終わったら、さっさと職場を後にするのが合理的ではあります。

 それでも、マネジメントに携わる者はやはり「誰が夜遅くまで残って仕事をしているか」とか「誰が朝早く来て仕事をしているか」を把握している方が望ましく、そのためには自分もその時間に職場にいる必要があります。

 但し、以上のようなことに気付くのは努力家か勘が鋭い人に限られるでしょう。

 昔の優秀なビジネスパーソンは、こういった"職場での学び"を通して自社の「暗黙知」を身につけ、出世コースを歩んだのだと思います。

 その一方で、もはや「OJT(職場内訓練)万能論」が通用しなくなってきたことにも注意する必要があります。

 上昇志向が強いビジネスパーソンが身につけるべきは、単なる「自社基準の暗黙知」ではなく、「汎用性と市場価値のある暗黙知」です。そのためには"職場での学び"に加えて、理論的な勉強を積み重ねる必要があるように思います。

 仕事をする上で、時間と場所の制約はなくなりつつある。そんな時、上記のような事柄は決まって忘れられているような気がしてなりません。

山田宏哉記

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 2010.10.27 記事一覧へ戻る 文筆劇場・トップ