ジョン・スミスへの手紙
 サイバー・ラボ・ノート (2742)

BS世界のドキュメンタリー「ムエタイに夢をかける」覚書

 NHKのBS世界のドキュメンタリー「ムエタイに夢をかける 〜タイ・少年ボクサー〜」(11月5日放送)を視聴しました。その内容は以下の通りです。

 少年の名はイッキュウ。ムエタイのジムに住み込みで修業する11歳の少年。イッキュウの夢は「ムエタイのチャンピオンになること」。そして、「家を買って、母親と一緒に暮らすこと」。

 イッキュウは毎朝、一時間かけて60分で12キロをジョギングする。イッキュウはジョギング・シューズのサイズがきつくなってきている。新しいシューズが欲しいとは思っているが、ジムの経営が苦しいこともわかっている。

 ジョギングの後、トレーニングをして学校に通う。タイでは貧困のために義務教育を受けられない子供が多いが、イッキュウはジムのおかげで学校に通うことができる。

 ジムで預かっている子供たちは、家庭に恵まれなかった子供たちだ。イッキュウも父親がいない。母親だけでは日々の生活の糧を得るのがやっとで、とても教育まで手が回らない。それを見かねたジムの経営者がイッキュウを引き受けることになった。

 ジムを経営しているのは、元ムエタイ選手とその夫人。ジムといってもリングがあるわけではなく、サンドバックとミットがある程度。経営は決して楽ではなく、赤字が続いている。建築の仕事を請け負い、そこで稼いだ金をジムの運営に回している。

 夫妻の実の子供はムエタイ選手であったが、22歳の時に事故で亡くなった。だから、ジムで預かる子供たちのことを実の子供同然に思っている。

 少年選手であっても、試合をすればファイトマネーが出る。ジムの少年たちはファイトマネーの半額をジムに納め、半額は自分のものになる。そして、自分のファイトマネーでジムの仲間の少年たちに何かをおごる。

 ムエタイを観戦するのは、工場労働者などが中心になる。試合会場で主催者の眼にとまればチャンスを掴むことができるので、少年たちは売り込みに必死になる。自分がダメなら、すかさず仲間を推薦する。

 時々、ジムには少年たちの母親が訪ねてきたりする。ある母親はジムに来た際、子供である兄弟に「つらいことがあっても我慢するのよ。私も本当はあなたたちと暮らしたいのだけど、我慢しているのよ」と伝えていた。

 ある試合の翌日、イッキュウは1年半ぶりに母親を訪ねた。

 母親は1日150バーツ(約¥400)程度の賃金で、建築現場の仕事をやったりやらなかったり。ようやく母親に会えたイッキュウは、ほとんど喋ることができなかった。イッキュウの眼から涙が流れた。

 イッキュウは自分の取り分であるファイトマネーである1000バーツ全額を母親に渡した。意を汲んだ母親は半額を受け取り、半額をイッキュウに返した。

 そしてイッキュウはまた、ムエタイの修業をする日常へと帰っていく。

山田宏哉記

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 2010.11.7 記事一覧へ戻る 文筆劇場・トップ