ジョン・スミスへの手紙
 サイバー・ラボ・ノート (2750)

グーグル「全社員10%昇給」とリーク社員の解雇に思う

 2010年11月11日付の「日経新聞」でグーグルが全従業員の給与を10%引き上げる旨の報道がなされています。

[引用開始]

米グーグル、世界の全社員10%昇給、人材つなぎ留め。
2010/11/11, 日本経済新聞 

 【シリコンバレー=奥平和行】インターネット検索最大手の米グーグルが全社員の月給を2011年1月から一律10%引き上げることが明らかになった。ウォール・ストリート・ジャーナルなど米メディアが報じた。同社では幹部社員が中途退社してライバル企業に移籍するケースが目立っており、待遇を改善して優秀な人材をつなぎ留める。

 世界に約2万3000人いる全社員が対象になる。社員の多くが勤務する本社がある米カリフォルニア州は失業率が全米平均を上回って推移しているが「IT(情報技術)業界では優秀な人材の奪い合いになっている」(パトリック・ピシェット最高財務責任者=CFO)という。

[引用終了]


 正直、驚きました。率直に言って、「全従業員が10%の昇給」というのは、破格の大盤振る舞いでしょう。日本企業の人事担当者なら、おそらく目がクラクラすると思います。

 ただ、気になっていたのは、これがグーグルとしての公式発表なのか、という点です。企業は普通、このような人々の嫉妬心を煽るようなことをプレスリリースしたりしません。

 「従業員の収入」に関する情報はセンシティブなので、報酬が高い企業も、低い企業も、あまり積極的に公開することはありません。せいぜい、求職者向けに初任給が公開されるくらいです。

 そんなことを思っていたら、Wired Visionで「Google、『全員が昇給』をリークした社員を解雇」という報道がなされました。http://wiredvision.jp/news/201011/2010111221.html

 これにもまた、驚かされました。以前もグーグルでは、私的なブログで書いていたことを理由に、社員が解雇されています。

 僕が甘いのかもしれませんが、何となく、このようなグーグルの懲戒規定には違和感を覚えます。見方によっては、今回の昇給報道はグーグルの「広報」にもなっています。

 日本企業なら、このレベルのことでは解雇にならないし、また解雇にもできないでしょう。

 グーグルで働くことは、"技術者の憧れ"みたいに言われます。実際、社員が優秀であることは間違いないでしょう。

 しかし、だからこそ彼らは、「自分の名前で仕事をして、社会から認められること」を求めるのではないか。グーグルに入社できるだけの実力があるなら、自分で起業や独立等をしても上手くいく可能性が高いと思います。

 グーグルの施設内には、レストランやスポーツクラブのような施設が整っている、ということがよく言われます。それはなるべく従業員を囲い込んで、外部と接触させたくないからでしょう。

 いくらファンキーな服装が許可されていても、こういう"操作主義"というか"囲い込みの思想"に基づく企業で働くのは、意外と窮屈なものです。

 あり得ない話ですが、仮にグーグルのスタッフ部門に転職するチャンスがあったとしても、僕なら丁重にお断りしたい。なぜなら、自分のウェブサイトの閉鎖を要求されることが、ほぼ確実だからです。

 グーグルから優秀な人材が抜けているとしたら、おそらく報酬額が問題なのではない。「対外的に、自分の名前で仕事がしにくい」ことこそが問題なのです。

 優秀なビジネスパーソンほど、会社の看板ではなく、自分の名前で勝負することを望むものです。そして、社会からは"会社"ではなく"私"が評価されることを欲します。

 グーグルは技術力は圧倒的でありながらも、案外、こういう人間心理のイロハに無頓着なのではないでしょうか。

 山田宏哉記

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 2010.11.12 記事一覧へ戻る 文筆劇場・トップ