ジョン・スミスへの手紙
 サイバー・ラボ・ノート (2757)

 塩野七生(著)『日本人へ 国家と歴史篇』を読む

 塩野七生(著)『日本人へ 国家と歴史篇』(文春新書)を読了しました。ある冴えた言葉たちを前に、またしても自分の至らなさを痛感しました。

 [引用開始]

 知的労働者とはオカシナ人種で、カネや地位よりも、チャンスで動く人たちなのである。歴史を眺めていて、その国が興隆期に入ったとわかる現象は、知識人の動向にまず表れてくる。(P166〜167)

 [引用終了]

 
優秀な若者は「チャンス」に賭ける。古今東西、この一点は変わりません。

 おそらく、日本にも海外の優秀な人材を呼び込みチャンスはありました。1970-80年代のことです。しかし、日本はこの期を逸しました。

 今更、留学生等の誘致に熱心になっても、「30年、遅かった」という話です。

 日本への留学はもはや「ハズレくじ」である以上、「優秀なインド人が日本に留学させる」のは諦めた方がいいでしょう。むしろ、「優秀な日本人をインドに留学させる」ことを考えた方が現実的です。


 [引用開始]

 人種差別主義だから排斥するのではない。第二次世界大戦後から苦労して再建した国につい最近になって入ってきて、同じ権利を要求する難民たちに納得がいかないだけなのである。
(P211)

 [引用終了]

 
人々の本音を捉えた指摘でしょう。

 NHKのクローズアップ現代「アメリカ 激化する“反移民”」(9月30日放送)でも報道されていましたが、移民というのは厄介な存在です。

 同番組によれば、例えばアメリカでは移民の多くは白人のやりたがらない低賃金の労働に従事しています。

 日本人も介護のような労働は自分たちでやりたくないので、フィリピン等からの移民に押しつけようとしています。

 その一方で、反移民の急先鋒に立つのは、大抵、その国の低所得者たちです。

 人間は「そんな仕事は移民にやらせておけ」と思う一方で、「あいつらが安い賃金で働くから、俺たちの仕事がなくなった」とも感じる存在です。
 

 [引用開始]

 「密約」が成されたからこそ、沖縄は、そこに住む人々とともに日本への帰還が実現したのだと、私は思っている。(P252)

 [引用終了]


 これもまた、冷徹なリアリズムの認識です。

 "非核三原則"と"沖縄返還"を天秤にかけた時、日本が沖縄返還を選択したのは、間違っていなかった。「密約問題」を考える時に忘れてはならない視点でしょう。

 外交において、無償で"領土"が返還されるとは考えにくい。そのような場合は、裏で何らかの取引がなされているのが自然です。

 ちなみに沖縄関係の著書では、何と言っても佐野眞一(著)『沖縄 だれにも書かれたくなかった戦後史』(集英社)を推奨したい。沖縄には数々のタブーがあることがよくわかります。

 以上、『日本人へ リーダー篇』に引き続き、「さすが」と言うしかありません。

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 山田宏哉記

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 2010.11.16 記事一覧へ戻る 文筆劇場・トップ