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 クローズアップ現代「“新興国人材”日本企業は変わるか」覚書

 NHKクローズアップ現代「“新興国人材”日本企業は変わるか」(2010年11月17日放送)を視聴しました。以下、その覚書です。

 日本企業の海外売上高比率では、アジア太洋州のシェアが右肩上がりで拡大している。2009年度にはアメリカ(11.3%)を抜いて、1位(12.9%)になった。

 「本社幹部は全員日本人、海外現地法人のトップの日本人」という従来のやり方に変革が迫られている。これでは、優秀な現地の人材を雇うことができない。

 2010年11月、中国上海で日本企業17社が合同で開いた就職面接会。全員が複旦大学や上海交通大学など中国トップクラスの学生。日本人と同待遇で、日本の本社で働いてもらう。

 なぜ日本人ではなく、中国人を必要としているのか。大手玩具メーカーのタカラトミー。少子化で国内市場の縮小が避けられない中、中国市場に参入したものの苦戦が続いている。

 苦戦の原因は、日本で販売している商品をそのまま持ち込んだことだ。パッケージも日本語のままのものがほとんど。ミニカーの商品は中国の安いメーカーの値段の20倍になる上、中国で人気がある車種も揃っていなかった。

 タカラトミー執行役員の黒木健一氏曰く「日本のクオリティ こだわりを全部持って中国に進出してみたが、結果的に市場で割高商品になってしまった。社員もどんどん現地化して、現地で成功するように動くことが一番の課題」。

 今回の合同面接会に参加した企業は上記のように同じ悩みを抱えており、中国人の本社採用に乗り出した。

 カゴメ副社長の大獄節洋氏曰く「自信を持って日本で商品を作ってマーケティングをしてきたが、中国でそのままのものを提供してもなかなかうまく展開できない」。

 日本の常識を打ち破る企業として、番組では楽天を紹介。本社で採用した500人のうち100人が外国人。社長の三木谷氏曰く「"日本人"という限られたプールだけでやっていた方がいいのか。世界中のタレント[才能]を入れていくのか。日本の1億3000万人と世界の50億人[世界人口は約70億人]を比べれば、そこからトップを選んできた方がいいに決まっている」

 楽天がとりわけ力を入れているのが中国市場の開拓。ネット通販の市場が既に1億人を上回っているが、成功するには中国の特殊な事情に対応しなければならない。ネット上には本物かどうか定かではない商品が溢れている。

 こういう市場を開拓するためには中国人のノウハウが欠かせない。日本語いう枠を取り払ったおかげで、優秀な中国人を獲得することができたという。

 入社3年目で執行役員に抜擢された何書勉さん。曰く「直接社長に『中国ではこういうことが大事ですよ』『中国ではそういうことはどうしても避ける必要があります』と経営層に直接アドバイスができるとすごくいいことだと思う」

 三木谷氏曰く「"日本企業とは何ぞや"という定義が大きく変わっていると思う。法律上、日本に登記しているのが本社であるということ以上のことはない」

 番組にゲストとして招かれたのは一条和生氏(一橋大学大学院教授)。曰く「大きく3つの特徴があると思います」。

「1つはボリュームゾーンへの挑戦。つまり、中底辺市場です。今までの日本企業はトップのプレミアム市場にフォーカスしていたと思いますが、高機能で値段が高くなりがちだった。」

「しかしいまや、多くの企業はそれが間違いだと気付き始めている。もっともっと大きな企業がボリュームゾーンとして存在する。しかも上に留まっているだけでは、新興企業にキャッチアップされてしまう。」

「2つ目はボリュームゾーンに対しては、従来の仕事のやり方が通用しない。まず、お客様のニーズが全然違う。日本人からは全然わからないようなニーズが出てきている。さらに、ものすごく低価格で作らないといけない。

「そのためには所謂"リバースイノベーション"の必要性が出てきた。現地でしかわからないニーズを把握するのは、とても日本人にはできない。ボリュームゾーンを取るためにはローカルな(地元の)優秀な人に頑張ってもらわないといけない。」

「(日本企業が欧米企業に人材獲得競争で負けているのは)今までのやり方が根本的に間違っているからだと思いますね。日本のやり方を押しつけるような傾向が強く、日本の文化や日本語を学ばないとわからないことが多かった。上昇志向の強い人は、そういうところには行きたくない。日本企業は優秀な方に扉を閉ざしていたというのが現実ではなかったか」

「制度においても"ガラスの天井"といった日本人中心のマネジメント、日本人中心の様々な評価制度があった。そのために能力が高い方々の希望に応えられていなかった。」

 中国での人材争奪戦は、日本企業だけでなく、外国のグローバル企業によっても行われている。中国最高峰のひとつである北京大学には、世界中の企業が殺到している。例えば、IBM、P&G、ユニリーバなど。

 マイクロソフトに関してはル・ゲイツ氏は3年前から北京大学の名誉理事を務めており、毎年10人ほどを採用している。

 また、北京大学就職指導課課長の陳永利氏曰く「(欧米企業は)教授と人脈をつくって欲しい学生を獲得しています。彼らのやり方はどんどん進歩しています」

 ある中国の学生曰く「年功序列という制度があることはわかりますが、私は優秀な人材が早く昇進する会社に入りたいです」。


 山田宏哉記

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 2010.11.19 記事一覧へ戻る 文筆劇場・トップ