ジョン・スミスへの手紙
 サイバー・ラボ・ノート (2768)

 NHKスペシャル「日韓中 緑色戦争」覚書

 NHKスペシャル「日韓中 緑色戦争」(11月14日放送)を視聴しました。その覚書は以下の通りです。

 中国・成都。1日に6000トンのゴミが運び込まれる廃棄物埋め立て場。ゴミの深さは40メートルにもなる。韓国環境省の官僚たちがここを訪れていた。埋め立てたゴミから発生するメタンガスを回収し、燃料として活用するプラントを計画している。

 埋め立て場の責任者曰く「これからは韓国の埋め立て場を手本に環境を整備します」。

 年間30万人の命を奪っているとされる中国の大気汚染。3億人の健康を脅かす水質汚濁。中国政府は2006年に始まった5ヶ年計画で、環境汚染の克服を最重要課題に掲げた。

 環境保護省の技師長曰く「中国政府は環境保護を重視している。力を合わせて解決しなければならない。さもなくば世界中から非難されることになる」

 中国はこの5年で汚染克服のために20兆円の資金を投入した。

 さらに、環境への取り組みを役人の人事評価の項目に取り入れた。山東省副省長曰く「環境対策に怠慢な幹部を全員クビにしました」。

 中国での環境対策の分野で日本やドイツを相手に、頭角を現しているのが韓国。「韓中共同研究プロジェクト」により、次々と中国との契約を勝ち取っている。いわば政府間の"御用聞き"の仕組み。設立から6年で50以上のプロジェクトが立ち上がった。

 韓国の官僚と企業は「たとえ技術が流出しても、重要な市場を押さえてしまう」という戦略を採用している。

 韓国環境省ムン・ジュンホ次官曰く「韓国と中国が環境技術の共同開発を一層推進し、中国が抱える深刻な環境問題の解決に貢献できるように期待します。韓国政府はあらゆる支援を惜しみません」

 ソウル郊外にある韓国環境省。GDPの4割を輸出に頼る韓国では2年前、「低炭素・緑色成長」を宣言。日本を圧倒した半導体・液晶に続き、環境産業を第三の輸出産業に据えた。韓国の官僚たちは韓国の環境技術を海外に売り歩くセールスマンの役割を担う。

 韓国の官僚たちは自国のベンチャー企業一社一社のマーケティング戦略まで立案する。中国で地歩を固めた韓国は、いまや日本市場の攻略にも乗り出してきている。

 韓国のイ・マンウィ環境相曰く「経済と環境の両立こそ国力という緑色成長の時代に突入しました。国民から監視されている心構えで、手抜きなく仕事を進めてください」。

 「2016年には半導体産業を越え、環境産業の時代が到来します。韓国がどの国よりも早く発展し、世界に貢献できる絶好のチャンスです」

 対する日本。環境技術に関する特許数が世界一であるにもかかわらず、技術流出を恐れ、中国市場を攻めあぐねてきた。

 日本の中小企業は設備投資などの落ち込みから仕事が激減している。こうした中、多くの中小企業が中国の緑色市場に活路を見出そうとしている。

 大和化学工業の土井潤一社長は、工場の廃液を真水と有害物質に分離する技術で中国に売り込みをかけている。しかし、韓国勢に先を越されたり、価格面で折り合わなかったりで、ずっと注文がとれずにいた。

 結局、土井さんは腕を見込んだ中国のメーカーに製品の製造を委託することにした。これで価格を3割は下げられる。中国側との契約書の中には「知的財産権を無償で使用できる」という条項が盛り込まれた。不安を振り切っての決断だった。

 土井社長曰く「あまり深くは考えていない。深く考えたら足が止まる」。

 さらに、土井さんは北京大学に排水処理装置を"寄付"した。さらに研究費として360万円を提供し、共同研究することにした。北京大学とのコネクションを優先する決断だった。

 韓国の尖兵として中国市場を開拓してきたジェイテック社長も「中国では市場原理ではなく、独自のコネがものを言います。わが社も中国政府に認められて市場で動けるようになりました。広範かつ容易に仕事を進めるため、利益を捨てることも織り込み済みです」と言う。

 中国政府は2015年までに環境問題解決のためにさらに37兆円の投入する予定だ。

 中国では今、環境都市の計画が次々と進められている。その壮大なプロジェクトに参画しようと世界が殺到している。中国は先進国の環境技術を吸収し、一大環境大国になろうと目論んでいる。

 急激な発展で世界最悪の環境汚染に苦しむ中国。その環境市場を制する者が、アジア、さらには世界の環境市場を制することになるだろう。

 山田宏哉記

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 2010.11.21 記事一覧へ戻る 文筆劇場・トップ