ジョン・スミスへの手紙
 サイバー・ラボ・ノート (2770)

追跡!AtoZ「漂流する主婦 ヤミ金に走る その理由」覚書

 
NHK 追跡!AtoZ「漂流する主婦〜ヤミ金に走る その理由」(2010年11月20日放送)を視聴しました。その覚書は以下の通りです。

 現在、大手クレジットカード会社には、「借金ができなくなった」という主婦からの問い合わせが殺到している。

 今年6月、改正貸金業法が完全施行された。このため年収の1/3のを超える額の借金ができなくなった。改正貸金業法のために、借金ができなくなる主婦やサラリーマンの数は500万人に上ると推計されている。

 40代専業主婦のAさん。夫と小学生の息子の3人暮らし。医療費など突然の出費の際は、クレジットカードで支払ってきた。しかし最近、クレジットカードでのキャッシングができなくなった。

 夫の年収は400万円台。貯金はなし。そのため、子供の夏期講習の際などは、夫に内緒で借金をして凌いできた。

 借金のことを夫に言わないのは「言いづらいから」。曰く「私がちゃんと働けばちゃんともっとできるし、給料を持ってくる夫には、お金足りないから借りているとは、ちょっと言えないです。やりくりが悪いんじゃないかみたいに言われるかな。」

 40代専業主婦のBさん。夫と離婚し息子との2人暮らし。これまで急な出費の際は、街の消費者金融を利用していた。法律改正後、借りられなくなった。

 曰く「昔どうしても生活に困って、いくらかね貸してと頼んだことはあったんですけど、そんなんでやっぱり、友達もたくさんなくしましたしね。だから金銭的なことで友達に相談するのはねぇ。やっぱり友達ってすぐに作れるものじゃないでしょう。」

 そこでBさんが頼ったのが闇金だった。息子が入っている野球チームがユニフォームを新調することになったのがキッカケだった。

 曰く「やっぱり子どものことは、自分のことは、みすぼらしいというか惨めな思いしてでもいいんですけど、子どもに惨めな思いさせるのだけはできない、させたくない」。

 Bさんが闇金業者から借りたのは5万円。これまで返したのは利子の9万円だけ。利子を払い続けるだけで精一杯だった。

 主婦たちのあいだに"ソフトヤミ金"と呼ばれる手口が広がっているという。主婦が相手の場合、まずは安心させることが重要のようだ。番組には大阪弁の"ソフトヤミ金"の男が出演し、その実態を語った。

ソフトヤミ金の男曰く「怖がらさん方ですかね、始めは。貸すときに先入観みたいな感じでいきなり怖いって思ってしまったら、お金だけをもらって連絡つかんていうのが多いんでね。(「絶対返せよ」みたいなことは)言わないです。金利だけ入れてもらえたらええみたいな感じで。」

 ヤミ金業者が最も付け込みやすいのが、「夫との会話が少ない主婦」だという。

 ソフトヤミ金の男、続けて曰く「友達とか旦那のおらんあいだのちょっと喋り相手か、彼氏の間ぐらいみたいな奴もいてましたね。変な話、一緒に住んでたら、優しい言葉もかけてくれへんでしょ。普通に夫婦生活してて、朝『行ってきます』って言って、帰ってきて『おぅおぅおぅ』みたいな感じの会話でしかないですやんか。」

続けて曰く「そこに僕が行って、『大丈夫ですか』って言ったら、別に普通の言葉でも、向こうからしたら、『心配してくれてんねや』ってすごい勘違いをしてるんですね。ヤミ金と言うより、主婦相手のカウンセリングですね。」

 上記のように優しい言葉で主婦に近付くソフトヤミ金だが、その裏には犯罪者の顔がある。

 30代のCさん。曰く「最初、主人が知らないうちは『家族に知らせるぞ』っていうのから始まって、あとは住所を知ってますから、『子どもさんどこの小学校ですよね』と言われる。『無事に学校から帰れると思うな』みたいな脅しがあったりとか、子どもを守らないといけないし、すごく怖かったです。」

 Cさんはヤミ金とは気付かずにハマったという。実家の父親の入院費用を夫には内緒で借りようとしていたCさん。消費者金融から断られる中で、電話帳の貸金業者の広告が目にとまった。

 曰く「ご来店不要とか、即日振込だとか、借りやすさっていうのとかも」。広告に掲載されていた金利は20%以下。正規の業者とうたっていた。

 Cさんは広告を掲載している業者に電話をかけたが、誰も出なかった。しかし、なぜか全く知らないヤミ金業者から誘いの電話がかかってきた。番組の取材班が調べたところ、客の電話番号を集めるためのダミー広告だったことが判明。

 Cさんが最初に借りたのは5万円。月4万円の利子を払うため、別の業者から借り入れた。このようなことを繰り返しているうちに、2ヶ月で81万5000円になった。そして、Cさんが利子を払えなくなった瞬間、家族を巻き込んだ執拗な嫌がらせが始まった。

 ここで番組に関西で5つのヤミ金業者を束ねているという60歳くらいの人物が出演。借金を返せなくなった主婦たちからどのように回収するのか、その手口を語った。

 闇金統括者曰く「スタイルのいい人とかいますけど、そういう人らは風俗へ働きに行くことが可能だと考えるわけですね。風俗へ行ったら返せますやんか。」

 また、主婦たちに犯罪などをさせる場合もあるようだ。

 曰く「離婚したような形とってね、2人くらい子どもいたら、(生活保護などで)25万円以上もらえますから。そういう疑似犯罪、犯罪に近いことが増えよるやろね」

 この他、保険金詐欺やクレジットカードを使った詐欺などをさせる場合もある。

 さらに闇金統括者は主婦からカネを取りはぐれることがないよう、借入申込書の裏に家族構成を書かせている。家族構成が一番大事で、何かがあったときは、家族構成を頼りに探す。家族の情報を握られた主婦は、逃げることができなくなる。

 闇金統括者曰く「良心って、何の良心がいります? サラ金があかんようになったわけでしょ。表向きの街金が。せやから借りられへんわけですやん。即貸してくれる所というのはやっぱりヤミ金屋さん。」

 
ヤミ金の被害に遭っても周囲に相談することができない主婦たち。番組を通して見えてきたのは、孤立する主婦たちの危うい現状だった。


 山田宏哉記

Tweet

 2010.11.22 記事一覧へ戻る 文筆劇場・トップ