ジョン・スミスへの手紙
 サイバー・ラボ・ノート (2772)

 塩野七生(著)『生き方の演習 若者たちへ』覚書

 塩野七生(著)『生き方の演習 若者たちへ』(朝日出版社)を読了しました。塩野さんが10年ほど前、高校生から大学初学年の若者たち向けて語った講演を収録した本です。この講演を聴いたのは今の僕と同じ世代です。

 専門知識はさほど直接的には使っていないけど、本気で語っていることがよくわかります。

 以下、その貴重な知恵を紹介させて頂きます。

 
[引用開始]

 どんなに外国語を勉強しても、その水準が母国語の程度から上にはいかないんです。だから母国語をきちんと身につけておかなければいけない。(本書P21)

 [引用終了]


 これは極めて重要な指摘です。母語よりも上手に外国語を操ることはできない。考えてみれば当たり前のことですが、昨今の"英語熱"の中では、忘れられがちのことのように思います。

 尚、塩野さんの息子さんに対する教育方針は「世界中のどこでも生きていける男に育てる」というものだったようです。

 [引用開始]

 一生懸命に苦労して外国人と張り合ってきた人を、今までの日本ではそれほど認めてこなかったことは確かです。つまり、他のことと同じで、この面でも悪平等だったんですね。(P58)

 [引用終了]


 掛け声として、「グローバル化」や「異文化交流」と言うことは容易なことです。しかし、実際にそのような経験をされた方に伺った話では、それほど生易しいものではありません。

 私もメンターから「趣味や観光で外国人と交流する場合は、いい加減な意志疎通でも許される場合があるが、まともに仕事をすれば文化習慣面の衝突は必ず起こる」と教わりました。

 [引用開始]

 どうも私には、日本人は選択肢をひとつしかもたないというところが目について仕方がないんです。

 たとえば、ペルーの日本人大使館で起きた人質事件です。あの時、日本側は平和的解決という選択肢ひとつだけで突っ走ったわけです。と言っても、私は平和的解決を望むのがいけないということではなく、そのことしか選択しなかったことがいけないと思うんです。(本書P29)

 [引用終了]


 タフな状況下では、選択肢がなければ、必ず足元を見られます。
 一部の企業で、従業員に対して低賃金で過酷な労働を強いるのは「無茶をさせても、会社を辞められることはない」と見越しているからではないでしょうか。

 選択肢がなければ、賃金の交渉をしようにも、圧倒的に不利です。会社側から「嫌なら辞めて結構」と言われたら呑むしかありません。
 
 [引用開始]

 つまり、変わりつつある時代、ないしは企業の求めに応えるには、しっかりと勉強する他ないわけです。何年か前の先輩たちのようなやり方をしていたのではいけない、と考えてください。大切なのは、学校にも企業にも頼ることなく、自分をみがくことです。(本書P67)

 [引用終了]


 社会人にとっては、勉強は義務ではなく、権利です。

 私もメンターからよく「忙しさを言い訳に勉強をサボっていると、市場価値を失う」と助言を受けました。実際、その通りだと痛感します。

 単なる体力任せの労働集約型の仕事のスタイルでは、今後はジリ貧でしょう。前例の踏襲も、徐々に「悪しき習慣」になっていくでしょう。

 付加価値が高いのは、インサイト(洞察)の部分です。もちろん、知識を持っているだけでは不十分ですが、知識がなければ話にならないでしょう。そのためにもやはり、徹底的な勉強が必要だと言えます。

 尚、本書の中で塩野さんは、"伸びる若者"の条件として「好奇心の強さ」と「大胆さ」を挙げていることも、併せて付記しておきます。

 山田宏哉記

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 2010.11.23 記事一覧へ戻る 文筆劇場・トップ