ジョン・スミスへの手紙
 サイバー・ラボ・ノート (2773)

 日本航空破綻から何を学ぶか

 会社更生手続き中の日本航空がどうにも迷走しているように見えます。

 現在、48,000人いる従業員の数を16,000人削減し、32,000人にするというものです。

 日本航空は11月15日、最大250人の整理解雇を実施することを発表しました。希望退職者が目標値の1,500人に達しなかったための措置とされています。

 労組などは反発しているようですが、「日経新聞」では11月21日付の社説で「日航の整理解雇やむをえぬ」との論を展開しています。

 しかし、それ以上に重要なのは「日本航空の再建は可能なのか」という点ではないでしょうか。

 失礼ながら、海外の格安航空会社との競争が激化する中、僕には日本航空が競争優位となるようなビジネスモデルを持っているとは思えない。少なくとも、「景気回復が頼みの綱」では再建は不可能ではないかと思います。

 そんな中、希望退職や整理解雇の嵐を潜り抜け、何としてでも職場にしがみつくことは賢明な選択なのでしょうか。ちなみに、日本航空の従業員の平均年収は約810万円(2009年時点)。高めではあると思いますが、目くじらを立てるほどの金額ではないでしょう。

 そんな折、「アエラ」(2010年11月15日付)に「JAL『CA解雇』の謀略 海外で『整理』が始まった」という示唆的な記事が掲載されました。

 JALが迷走する原因を言い当てているように思いますので、 少し長いですが引用します。

 [引用開始]

 会社側は労使交渉のたび「金融機関に更生計画を認めてもらう上で、整理解雇も辞さない」と言い、あたかも銀行が整理解雇を求めているかのような口ぶりだが、事実は違う。メガバンクも政府系金融機関も担当幹部は「整理解雇まで要求した覚えはない。むしろ経営陣を刷新してほしい」と口を揃える。

 JAL再建の最大の失敗は、倒産責任のある幹部層を温存し、彼らが後継幹部の人選までしたことにある。これでは負の遺伝子が断ち切れない。

 前国土交通大臣の前原誠司氏の側近は、JALの旧体制が大西現社長を擁立した、と打ち明ける。この側近や国交省幹部らによると、西松遥社長(当時)は昨年11月、宿利正史国土交通審議官に「次の社長は大西氏にしたい」と打診し、宿利氏が前原氏にJALの社長交代の意向を説明した。前原氏はそのとき憤慨した様子だったという。

 前原氏の反対で、いったん立ち消えたが、年明け後、大西氏が再浮上した。稲盛和夫会長は大西氏と面談した際に一度ノーを突きつけたものの、最後は彼を受け入れた。ここで別の選択肢を選べなかったのが運の尽き、キングメーカーの西松氏は早々と日航財団理事長に天下る権利を得た。労務閥の大村裕康氏や企画部門の来栖茂実氏、西松体制立役者の池田博氏、田口久雄副社長ら倒産責任のある面々がみな続投することになった。

 (略)

 高いプライドに低い志。JAL幹部に、よくいる。

 労組側が安全性を錦の御旗に労働条件の悪化に反対するのと同様に、JAL経営陣も「航空業の特殊性」を盾に居座りを決め込む。本来団結すべき労働側が職種ごとに細分化されるのと同じように、経営側も労務閥、企画閥、営業閥など派閥ごとに割拠する。自身が属する集団の部分最適ばかりに目が行き、会社の全体最適は考えない。激しく対立する労使だが、鏡に映る姿は実は似ている。(「アエラ」2010年11月15日付)

 [引用開始]


 「アエラ」ですから、面白おかしく書いている面はあると思います。それでも、記事を読む限りでは、自分が働きたいと思うような企業風土ではありません。倒産も「むべかるかな」と思わせるには十分です。

 若き日に、パイロットやフライト・アテンダントを志した。それは立派な決意だったと思います。そんな若者たちも、いつしか組織の論理に染まり、内部の派閥抗争に明け暮れるようになっていく。

 そして、経営破綻。正直、志を抱いて日本航空に入社した人は、気の毒だと思います。とはいえ、自分の責任ではなくても、会社は潰れる可能性があるし、失職するリスクもあります。

 だからこそ、僕たちが日本航空の破綻から学ぶべきことは何より「自分の勤務先の会社も、日本航空のようになる可能性がある」ということではないでしょうか。

 仮に自分が日本航空に勤務していたとたら、希望退職や整理解雇の嵐が吹き荒れる中、どう行動するのか。決して他人事だと思わず、シミュレーションをしておくことは無駄ではないと思います。

 もっとも今回のような場合、より多くの"選択肢"を持つ従業員の方が有利であることは、言うまでもありません。

 山田宏哉記

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 2010.11.23 記事一覧へ戻る 文筆劇場・トップ